アジャイルからマネジメントへのメッセージ

2012.04.04

経営・マネジメント

アジャイルからマネジメントへのメッセージ

野崎 吉弘
株式会社 アイ・ティ・イノベーション シニアコンサルタント

アジャイルソフトウェア開発はソフトウェア開発の一つの方法にすぎませんが、重要なことはマネジメントに対して価値の転換を要請しているということです。これまでのマネジメントのやり方や考え方にとらわれず、時代やビジネス環境の変化に伴う価値の転換を敏感に察知して、「俊敏に(agile)」その価値観を行動に反映する構えを持つということが、アジャイルソフトウェア開発者からの重要なメッセージではないでしょうか。

私はアジャイル懐疑派のマネージャー


はじめにお断りしておきますが、私はアジャイルソフトウェア開発の実践者でも推進者でもありません。むしろレガシーな開発手法や品質管理手法に基づく、エンタープライズのビジネスシステム開発のプロジェクト・マネジメントを実践・推進して来た者です。ですから、この記事は「アジャイル懐疑派のマネージャー」の発言として読んでいただければ幸いです。

これまでアジャイルを実践・推進している方々のお話を聴いたり、ネット上の記事を読んだりしても、ペア・プログラミング、イテレーション開発、チーム・ファシリテーションなどのプラクティスにかかわるお話が多く、今ひとつピンとこなかったというのが率直な感想でした。マネジメントの視点ではそれよりも、顧客との契約や品質管理はどうなるのか?技術力のある多能工的人材をどうやって確保するのか?適用可能なプロジェクトの規模は?部分最適化をどうやって避けるのか?などの懸念が先に立ち、アジャイル開発を開発プロジェクトに適応するのはまだ難しいのではないかと思っていました。

ところが、最近アジャイルソフトウェア開発を実践されている方とじっくりお話をする機会があり、いろいろ話を伺っているうちに「もしかして、アジャイルを実践・推進されようとしている人たちと、私とはそもそも考え方が違うんじゃないか?」と考えるようになったのです。

考え方の違いが生産性を落とす


横道にそれますが「考え方の違い」が引き起こす影響について、すこし私の経験をお話すると、90年代の初め頃日本語のワープロソフトは一太郎に代表されるような升目を埋めるタイプのものが主流で設計書などの図書もそれを使って作成していました。90年代の半ばから後半にかけてちょうどMacやWindowsが仕事にも導入されるようになり、EZ-WordやMS-Wordのような行や段落毎に体裁を整えるタイプのワープロソフトで図書を作成するようになった時のことです。

以前に比べて図書作成のために深夜まで残業をしたり休日出勤をしたり、作業効率が極端に落ちる人が出てきたのです。確かにツールが変わると慣れるまでにある程度の時間がかかるものですが、PCの性能も上がっているのに、と私は不思議に思ってその人に話を聴いてみました。曰く「なかなか思うとおりに文章の体裁が整わない」と言うのです。そこで、実際に何をやっているのか見てみると・・・、新しいワープロソフトを使っていながら、古いソフトでやっていたように全角/半角スペースを駆使して、一生懸命文章の体裁を整えようとしていたのです。しかも、段落毎の書式設定も使わず、ほとんど文書全体を同じ書式で書いていました、効率が悪いわけです。新しいワープロソフトを使いながら、頭の中は古いワープロソフトを使っていた時のままだったのですね。
きっと同じような経験をされた方もいらっしゃるのではないかと思いますが、新しいツールを導入する場合、それがどういう思想や考え方で作られたか理解できないと、単に使い方を覚えるだけでは、上手く使いこなすことができないばかりか、逆に生産性を落とす結果を招くことがあるということです。

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