偽装時代のミッションステートメント

2007.10.31

経営・マネジメント

偽装時代のミッションステートメント

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

赤福と同じ手口の偽装発覚。「やってくれたな御福餅」という感じだ。過日、自Blogにて「赤福は市場から退場させられたが、酵素や添加物(ソルビン酸カリウム)を正直に表示している御福餅はエライ」とほめた矢先なので腹が立つ。 Blog云々はともかくとして、全国に憤懣やるかたない気持ちの人も少なくないだろいう。

昨今の偽装は食品に限らないが、とにかく多すぎる。
しかし、赤福に代表されるように、老舗の偽装の場合、綿々と長い歴史の中で行われてきたことなので、時のトップの力だけでは止められなかったという説明がなされる。
なぜ、止められないのか。それは、企業(店)の目的が「製品を作り続けること」=「のれんを保つこと」となっており、製品は生活者に供され評価されて初めて“商品”となるという原則が忘れられているからだ。
銘品といわれ、黙っていても売れるようになる。その結果、顧客を見なくなる。
長い歴史がかえって徒となっているのだ。

企業がそうした経年劣化を起こさないためにはどうすべきなのか。
一つの方法が、「ミッションステートメントの更新」だろう。
偽装に走った企業も恐らくは理念として「誠心」だの「お客様第一」だのを掲げているのだろう。明らかに形骸化しており、寒々しい限りだが。
その形骸化を排するため、トップの交代時などにミッションステートメントを書き換えるのだ。
たかがミッションステートメントと言うなかれ。1980年代、栄華の極みにあった日本経済の影でどん底にあった米国企業が復活したのは、IT投資による情報化推進とミッションステートメントの再構築による企業統治である。ミッションステートメントが真に企業の構成員の拠るべき縁となれば、トップから現場までが一体となって明らかに動きが変わる。社内の空気が変わるのだ。多くの企業でそれが実現されている。

では、顧客の姿を見失った多くの企業において、どのようなミッションステートメントが求められるのか。
それは、当Blogでも何度か紹介した「顧客を中心としたステートメントの構築」に尽きる。
企業再生の方法はいくつかあるだろうが、その一つとして、まずはここから始める努力にも期待したいものである。

【顧客中心のミッションステートメント】
(図参照)
①価値理念・・・その企業の哲学を表す。「自社は顧客に対してそのような存在であるのか」を明確にすることが中心となる。
②個性・・・他の企業にはない、その企業の独自性を表す部分。自社にしかできない、顧客に提示できることは何かを明確にする。
③理想とする顧客・・・自社はどのようなお客様のために存在するのかを明確に設定する。
④機能的付加価値・・・理想的な顧客に提供できる物理的メリット。自社が自信を持って提供できるものは何なのかを明確にする。
⑤情緒的付加価値・・・理想的な顧客との各種コミュニケーションを通じて、顧客をどのような気分にさせることができるかという、無形の付加価値を明確にする。
 上記①~⑤を設定するためには、図のピラミッドでそれぞれのパーツがどのような相互関係を持っているのかを意識して検討していく。
次のような文章に当てはまる言葉として作り込んでいく。

○○会社は、【価値理念】を約束します。
私たちは、【個性】として、
【理想的なお客様】に、
【機能的な付加価値】を提供し、
【情緒的な付加価値】を感じていただくため、努力をしていきます。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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