企業が「我々」として一丸となるためのミッションステートメント

2007.11.20

経営・マネジメント

企業が「我々」として一丸となるためのミッションステートメント

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

過日は部門内の正社員と業務委託社員の対立について記したが、実際には特定部門だけで起こる現象ではなく、また正社員同士でも「ヤツら」と言い合う対立の構図は存在する。 今回はその対立を乗り越えるためのミッションステートメントを紹介したい。

人間はとかく人を区分して対立の構図を作りやすい。
人が仲良く暮らしている所があったとしよう。そこに一本の線を引く。その線が居住区を南北に区切っていれば、やがて人々は線の向こう側、こちら側と区分し「南のヤツら」「北のヤツら」と言い合うようになる。線が東西を区分していれば「東のヤツら」「西のヤツら」だ。
筆者が住む共同住宅の管理組合は、組合の理事を数階ずつから均等に選出する。うっかり偏ると「上層階のヤツら」「下層階のヤツら」となるからだ。
斯様に、ちょっとしたことで対立の構図ができあがる。

企業に対するコンサルティングや研修を担当していると、特に顕著な対立の構図は「本社」と「現場」、または「営業」と「管理部門」などである。対立しても何もいいことなどないのに。
そんな対立の構図を打破する秀逸なミッションステートメントを見つけたのでここに紹介したい。
米国の「ボストン・ビール」である。
以下、同社のミッションステートメントの冒頭部分を記す。

われわれは、ボストン・ビール会社である。
われわれは、アメリカ最高のビールをつくる。
われわれは、相手の身になって人と接する。
われわれは、熱意、仕事への意欲、顧客への敬意を持ってビールを販売する。

(後略)

上記のミッションステートメントを作った創業オーナーは語った。われわれはという言葉を繰り返し、さらに「われわれは、ボストン・ビール会社である」というような、当たり前なことをあえて冒頭に掲げた理由を。
「会社という組織の中で、とかく“彼ら”“やつら”という言葉がはびこりがちだったから。“彼らはいつまであんなことを続けるんだ”とか、“やつらは何もわかっちゃいない”とか」と。
そしてこう続ける。「会社には“われわれ”しかいないのだと伝えたかった。会社とは単に法的な存在に過ぎない。会社全体が法的なフィクションなのだ。会社というものがあるとしたら、それはそこにいる人々が、ある種の目的に向かって、それぞれの行動パターンを適応させているからなのだ」。

出典:「世界最強の社訓」パトリシア・ジョーンズ、ラリー・カハナー(著)・堀紘一(監修) 講談社 (廃刊)

関連記事:「奴ら」と言うな。「我々」であれ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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