マネジメント力の欠如と消費税引き上げ論

2007.10.26

組織・人材

マネジメント力の欠如と消費税引き上げ論

猪熊 篤史

消費税引き上げは本当に必要なのだろうか?マネジメント力やリーダーシップの欠如によって消費者に負担が強いられるのは勘弁して頂きたいところである。

 財政再建や、そのための年金財源確保のために消費税の引き上げが議論されている。一定の支出をまかなうためにいくらの歳入が必要か計算されているようだが、消費税を引き上げたら経済成長が減速、あるいは、後退しないのかなど複合的な配慮があるのか心配になる。ビジネスや経営の観点で見ると、ごく単純な経済モデルに基づく表面的な試算による数字合わせのように感じてしまうのは私だけだろうか?

 消費税を上げなくて済むならそれにこしたことはないだろう。消費者の立場では出来るだけ出費は少なくしたいところである。競合他社が値上げのタイミングをうかがう中で、もし値上げせずに済ませられるならその方が有利である。品質が変わらないのならなおさらである。値上げによって対象顧客層を変えるなどのマーケティング手法は消費税の議論では使えない。消費税を上げずに済むなら、それが一番良い。

 企業経営でも費用が一定で(相対的に低く)、売上が伸び、利益が上がることが好ましい。消費税を据え置いて、経済成長によって税収が増えるのならそれに越したことはないはずである。

 米国を起源とする最近のサブプライムローン問題が国内の金融市場や金融機関の決算に悪影響を及ぼし始めたことも増税論に拍車をかけているようである。収入が伸びないのなら、費用を減らせという企業の論理と消費税を上げろ(国にとっての収益率を上げろ)という論理は少々複雑だが一致しているようである。消費者の立場で考えれば所得(収入)が増えず費用(税金)が増えるのではたまったものではない。生活するために消費を削るしかなくなる。そうすると今度は収入の基になる仕事が減ったりするので悪循環が生まれることになる。費用(消費税率)はそのままで収入(所得、税収)を増やすという力強いリーダーシップが望まれる。

 所得格差や地域格差が問題になっているのだから、基本的にはお金を持っている人から税金を取ったら良いだろうと思うが、なかなかそんな主張は通らないようである。そんなことを言えるのは有力者であって、基本的には格差の上層にいる人々である。自分で自分の首を絞める人はいない。弱い立場にある人々は、見て見ぬふりをするしかない。

 所得税の体系の見直しによって高所得者の負担が増える部分の税金こそ目的税化して環境や福祉のために使えば良いと思う。「もっと税金を払うから、もっと稼がせろ!」というリーダーシップがあっても良いだろう。

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