「言葉の定義、言葉の暴力」

2011.05.26

経営・マネジメント

「言葉の定義、言葉の暴力」

野町 直弘
株式会社クニエ プリンシパル

前回、そして以前にも良い企業のカルチャーの一つには「共通言語」があるということを取り上げました。 誰もがその言葉を使えば同じ認識を持つことができる。 共通の言葉という意味だけでなく、共通の手法であり、共通の目指すべき姿を表すものなのです。

GEでの「6σ」「ワークアウト」「DMAIC」「DMADV」しかり、トヨタの「カイゼン」「(にんべんのつく)自働化」「見える化」「棚入れ」、先般取り上げた長浜キヤノンさんの「三他のこころ」「生産的まさつ」などなどです。

最近逆の意味から言葉の持つ力はやはり大きい、と感じることがあります。
それは今回の震災での場面です。

今回の震災を機に多くの聞きなれない言葉が使われるようになりました。
「メルトダウン」「復旧と復興」「未曾有」「想定外」「風評被害」多くの言葉に対して私は違和感を覚えます。

例えば、「メルトダウン」です。
「メルトダウンしているのですか?」どこかの記者が会見で質問します。
誰もがメルトダウンという言葉に対して深刻なイメージを持っています。
「はい、そうです。」と答えると、翌日の新聞で大きな見出しで「福島原発メルトダウン」という記事が出ることは容易に想像できます。
実際には「メルトダウン」という言葉は正式な用語ではないようです。
炉心が溶けて下に落ちる状態であればいわゆる「炉心溶融」の状態というのだそうです。「炉心溶融」はしていても「溶けた燃料が圧力容器を突き破って漏れる状態」であるかどうかはまた別の話です。ですから当初の会見での受け応えとして「燃料が原形を保っていないというのが定義なら、それに当たります」と答えていました。この答えは曖昧なようですが、実は正しいのです。
逆に多くの人たちは「メルトダウン」という言葉に「イエス」と答えたら「溶けた燃料が容器を突き破って漏れている」状態をイメージしてしまったでしょう。
(実際にはどうやら「溶けた燃料が容器を突き破って放射能が漏れている状況」であることが最近になってようやく分かりましたが。)

この件だけでなく、しっかり定義されていない言葉でイエス、ノーを迫られ、発言の責任を問われる、というケースが感じられます。

もう一つどうにかならないか、と思うのが「復旧」と「復興」です。
「復旧」は「壊れたり、傷んだりしたものを、もとの状態にすること。また、もとの状態にもどること。」であり、「復興」は「いったん衰えたものが、再びもとの盛んな状態に返ること。また、盛んにすること。」だそうです。

「東日本震災復興構想会議」なるものが発足していますが、彼らはその目的を読みますと主に「復旧」でなく「復興」のための会議なようです。
私は「復旧」だとか「復興」だとか言っていないで、やらなければならないことをさっさとやるべきだと考えます。

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野町 直弘

株式会社クニエ プリンシパル

NTTデータグループのコンサルティング会社である株式会社クニエの調達購買改革コンサルタント。 調達・購買分野に特化したコンサルティングを提供している株式会社アジルアソシエイツの元代表。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルがサービス提供を行います。

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