郵便事業会社の業績が厳しい理由

2011.05.25

組織・人材

郵便事業会社の業績が厳しい理由

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

郵便の新事業「取次ぎサービス」を成長させるために、大切なことは何か。

郵便局の業績が厳しいようです。特に郵便事業会社が、配達物の減少によって減収が続いており、これが全体の業績の足を引っ張っています。そこで注力しているのが、商品を取り次ぐサービスの拡充。集配の際に郵便物以外の様々な商品やサービスを勧め、売っていくことで、配達物の減少を食い止め、販売手数料の収入も得ていくのが狙いで、だから、拡販を図りたい会社には、何でもいいから売れる物をどんどん持ってきて欲しいというのが本音だと思います。ホームページの業績開示資料では、新しい取り組みの中の最初の項目に次のようにあり、業績回復の切り札的存在と考えている風に見えます。

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総合生活取次ぎサービス(郵便局のお取次ぎ)では、平成22年9月末現在、全国の郵便局において「引越」「携帯電話」「ハウスクリーニング」「光ファイバー接続」「ホームセキュリティ」「郵便料金計器」の6種類の取次ぎサービスを実施しています。
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普通の民間企業ではまず不可能な、全国2万4千ヶ所という網の目のように立地する郵便局が、たくさんの郵便局員を使って商品を紹介し、販売・配達・代金回収までしてくれるというのですから、魅力的な話です。取次ぎ料金も、売上の10%強のみと安い。ウチの商品を扱ってくれという会社が先を争うように提案をし、郵便局の取り扱う商品が一気に増えても不思議ではありません。ところが、そうならないのは何故か。

一つには、郵便局が定めた仕様のチラシと申込書を、取次ぎ販売を委託する会社負担で、新たに作成しなければならないこと。郵便局が決めたレイアウトでなければ局員が処理しにくいといった理由で、一切の例外なく、既存のチラシや申込書を使うことはできません。また、全ての郵便局が同じ商品を同じように扱うことを前提としているため、地域全部の郵便局が配布する分を作成せねばならず、取次ぎを委託する会社からしてみれば、余計なエリアの分も作成しなければなりません。

二つ目は、郵便局が顧客をよく把握していないこと。「非常に多くの人達に、商品を紹介できます」と言われても、どのエリアにどんな人がいて、どんなニーズがあるのかといったことが分らなければ、売れるイメージが湧きませんから、じゃあお願いしますとはなりません。沢山の人間が預かったり配ったりしていることを強みとしているわけですが、そこにマーケティングが加わらなければ民間ではパートナーとして不十分だということです。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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