泉谷しげるにあって、島田紳助にないもの。(以下、敬称略)

2011.05.14

ライフ・ソーシャル

泉谷しげるにあって、島田紳助にないもの。(以下、敬称略)

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

忌野清志郎さんの追悼ライブが5月2日に日本武道館で行われた。その会場で泉谷しげるは、「安全なんだろ、だったらお台場に造れ!一家に一台、小原発造れ、バカヤロウ!」と吠え、1万2000人の観客から、この日一番の喝采を受けたという。

泉谷しげる(ボーカル&アコギ)、吉田拓郎(ベース)、大友康平(ドラム)、浜田省吾(ドラム)、忌野清志郎(アコギ)、南こうせつ(アコギ)、伊勢正三(エレキ)、さだまさし(アコギ)、小田和正(キーボード)である。個人で、この凄いメンツを集められるのは、泉谷しげるだけだろう・・・きっと。

「金もない」「マスコミもぶら下がらない」現状の中で、このチャリティコンサートを開催してしまう実行力には、本当に頭が下がる。「1日1偽善」なんて自嘲気味に語る裏側には、こういう本物の人徳が隠れている。

前述の"メッセージソングの日"で合唱される名曲「春夏秋冬」には、次のような歌詞がある・・・

隣を横目でのぞき自分の道を確かめる、
ああまたひとつズルくなった、
当分照れ笑いが続く。


あの口の悪いおっさん=泉谷しげるは、本当は、こういうヒトなのである。粗暴な発言のウラは、こんな繊細さがある。反体制である自分という存在への照れや自戒を常に意識しながらも・・・前へ進むのである。一緒に泣いたりしない・・・照れ笑いしながら前へ進むのである。わかりにくいのだけど、そういう姿勢に、仲間のミュージシャン達は、賛同をしているのだと思う。照れ隠しの「1日1偽善」の善意に、見え見えの涙は似合わないのである。

その一方で、テレビは、見え見え善意を煽る。なぜなら、良い話に泣けば、良い人という評価を得て・・・、善意を上手に語れば、お金が集まる・・・。「照れ」がない見え見えの善意が評価されてしまう。見え見えの方が合理的に視聴率がとれる=スポンサーが集まるから、プロデューサーは、そういう番組を企画する。そして、島田紳助氏は、抜擢されて、、、その能力を発揮する。「ステキやん」とカメラの前で泣くことは、テレビの世界では、わかりやすくて、非常に合理的な行為なのである。

しかし、こういう手法も、大震災以降、通用しなくなるのではないかと思う。視聴者の「見え見え」であることの境界に対する意識=「見え見えリテラシー」が一気に高まっていく中で、泉谷しげるの活動は、もっと評価をされていくだろう。ある意味、良い時代に突入してきている。

「人の為と言いながら、自分の為」。「人の為」は、漢字の通り偽りなのである。だから、そこには、少しばかりの「照れ」が見え隠れしていないと虚飾になってしまう。ミュージシャンやアーチストは、その「照れ」を見られたくないから、歌にするのだ。芸術にするのだ。自分に嘘をつきたくない、見え見えの虚飾を嫌うから、自分の表現に依ってたって、善意を施すのだ。

泉谷しげるは、同志である忌野清志郎の死に対してインタビューで、「俺は、忌野清志郎の死は認めない」と、決して涙を見せなかった。見え見えの涙を頑固拒否する、その「照れ隠し」に、私達おっさんは、心の底から涙するのだ。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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