なぜ売れる?「パナソニック・ナノケア」の謎を探る

2010.12.16

営業・マーケティング

なぜ売れる?「パナソニック・ナノケア」の謎を探る

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

なぜ売れる?「パナソニック・ナノケア」の謎を探る

 パナソニックのイオン・ミスト美顔器「ナノケア」が売れているという。しかし、その「売れる理由」を読み解くのは難しい。なぜなら、ある意味「売れるはずのない商品だから」だ。

 12月10日付・産経新聞に「節約疲れ…ごほうび奮発 クリスマス商戦、高額商品脚光」という記事が掲載された。いわゆる「節約疲れ」が出てきたところで、目減りしていたし運用資産が回復し、臨時収入で「ぜいたく消費」が起きているとアナリストがコメントしている。高額商品の1つとして紹介されているのが、ビックカメラで売れ筋になっているというパナソニックの「ナノケア」である。「プレゼント用の需要が高い」ともある。

 実際にビックカメラ有楽町店を見てきた。特設の体験コーナーがあり、平日の日中にも関わらず、女性客と男性客が各々、品定めをしていた。男性が美顔器をプレゼントするのは女性のリクエストがあってこそなので、「ナノケア」は女性のハートをガッチリとつかんでいることがわかる。
 店頭の担当者に聞くと商品は3種類あり、特徴が異なるという。円筒形の「スチーマーナノケア」は、吹き出し口から出る「プラチナナノ粒子を含んだ温かいスチーム」を15分ほど浴びると、「キメが整った肌、ツヤのあるしなやかな髪」になるという。球形の「ナイトスチーマー ナノケア」は、枕の近くで付けっぱなしにして就寝すると、寝ている間に「肌のうるおいをキープ」してくれるという。もう一つ、二回りほど小ぶりな直径15センチほどの球形の商品は「デイモイスチャー ナノケア」。デスクやテーブルの上に置いて、仕事しながら、テレビ観ながら「肌のうるおいをキープし、うるおい美肌」になれるらしい。

 冒頭に「売れるはずのない商品」と書いたのにはワケがある。「イノベーション普及論」で有名なE.M.ロジャースは、革新的な商品が受入れられるためには、「観察可能性」が重要であると説いた。
具体的な例がある。ネズミの被害に悩む南米の農村において、「殺鼠剤」の普及が試みられた。毒入りの餌を食べたネズミは確実に死ぬ。しかし、殺鼠剤は普及しなかった。ナゼか。それは、「薬が効いていることが、目に見えなかったから」だ。殺鼠剤は遅効性で、ネズミは毒入りの餌を食べた後、物陰や屋外に出てジワジワと死ぬ。即効性の毒なら、村人の目の前で転げ回ってすぐ死ぬだろうが、そのシーンを目にすることがないため、効果があるのかを信じられなかったのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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