「利用シーン別売り場」でデジカメを売るカシオの狙い

2010.11.02

営業・マーケティング

「利用シーン別売り場」でデジカメを売るカシオの狙い

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 カシオ計算機は飽和し、低価格化に歯止めがかからないコンパクトデジカメ市場に対し、新たな売場提案でテコ入れを図る戦略に出た。

 プロダクトライフサイクルの変化と共に、消費者のニーズは通常どのように変化していくのか。フィリップ・コトラーの「製品特性3層モデル」と併せて考えるなら、デジカメの場合、以下のようになる。
 導入期では、顧客が製品を手に入れて実現したい「中核価値」だけでも購入してもらえる。デジカメラでは「デジタルで画像がきれいに残せること」だ。カシオが1995年にQV-10という25万画素の機種を市場に投入した。価格は65,000円であった。以降、各社の画素数競争が始まった。
成長期においては、中核価値は当たり前な要素となり、中核をどのように実現するかという「実体価値」が競争課題となる。「高倍率なレンズのズーム比率」や、ライカ、ツアイスなど「有名な海外光学カメラブランドのレンズを搭載」するなどの展開を行った。カシオはEXILIM(エクシリウム)という「薄型コンパクトで携行性のよい本体」にこだわった。各社のスペック競争である。
 そして、成熟期においては、さらに中核価値とは直接関係のない「付随機能」での競争となる。「印刷機能内蔵」や「無線LAN内蔵」など、様々な付随機能が開発・搭載されている。カシオは「動画・静止画合成機能」をEXILIMに搭載した。

 記事では、<コンパクトデジカメ売り場はいまだに有効画素数、レンズの広角対応、液晶の大きさなどスペックごとに商品を陳列する店も多い>と指摘している。市場のライフサイクルに追いつかず、成長期の戦場を来店客に見せているのだ。だからといって、付随機能を全面に出しても、それで売れるわけではない。付随機能とは、本来「中核価値の実現とは直接関係ないが、魅力を高める要素」である。誰もが一様に欲するわけではない。

 カシオが家電量販店各社に提案している売り場は、「旅行向け」「アウトドア向け」などの利用シーンごとに商品を陳列する売り方だという。

 「デジタルカメラ」を欲しいと思う人のニーズは何か。前述の中核価値である「デジタルで画像がきれいに残せること」であるが、今日、マニア以外フィルムカメラを使う人はほとんどいないので、「きれいに写真が撮りたい」ともっと単純に考えた方がいい。
 では、なぜ、どのように「きれいに写真が撮りたい」のかというニーズの深掘りをしてみれば、人によって、様々なシーンを想い出や記録を残すということと、思い描く想い出のカタチ(残したい絵柄)があることがわかる。そうしたニーズに対応した機種が一目でわかる売り場をつくって、「よく判らないから、安いのでいいか!」となることを阻止しようという試みだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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