「仕事を任せない上司」に腹を立てている若者へ

2010.10.27

組織・人材

「仕事を任せない上司」に腹を立てている若者へ

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「仕事を任せられない上司が増えている」という現象について考えてみると、原因として2つのことに思い当たります。

先日、ツイッターを見ていたら、「仕事を任せられない上司が多い。」「指示命令スタイルの上司は、まだまだ多いのかもしれない。」「任せる覚悟や任せた後の辛抱が足りないケースも見られる。」「自分が言われたら、決定権、責任すべてを任せるって捉える。」などと、仕事を任せるということについて、何らか不満や言いたいことがあるような会話がなされていたのですが、どうやら根本的な勘違いをしているように思うので、触れておきたくなりました。

そもそも、上司が部下に「仕事を任せる」というのは、全権を委任すると言っているのでもなければ、勝手にやっていいと言っているのでもありません。「任せた」という言葉は、「お前が全部責任をとれよ。私は知らない。」という責任放棄を意味してはいません。

その仕事に対する責任を負うのは上司や組織の長であって、「任せる」と言ってもそれは何も変わるものではないのに、勘違いして「任せられているのだから」と報告も連絡も相談もしないような人がいますが、そういう人に対しては責任を自覚する上司ほど不安に思うのは当然で、信頼できなくなってくるのでだんだんと任せられない人になっていきます。

サントリーの“やってみなはれ”だって、「責任は問わない、責任はとってやるから」という言葉が省略されているから光り輝くのであって、“やってみなはれ。そのかわり、失敗したらお前のせいだから。”では、何のメッセージにもなりません。だいたい、部下として関与されたくない(細かに情報を求め、指示命令してくる上司がイヤだと思う)のであれば、組織でやっている(シナジーの追求やリスクのコントロールをする)意味がないので、組織など離れたほうがよいでしょう。責任を取りたくても取れないのが部下であって、そんなに取りたいのであれば、一人になるしかありません。

こういう当たり前のことはさておき、「仕事を任せられない上司が増えている」というのであれば、その現象について考えてみると、その原因として2つのことに思い当たります。

一つは、昔ほど人数当たりの仕事の量が多くないので部下に任せる必要がない、ということ。経済成長が鈍化して、企業においても仕事の絶対量が増えない中で、ITによる効率化も進み、ひょっとしたら専門分化が進んですぐに任せられる業務が減っているという面もあるのかもしれませんが、部下に任せるような仕事がどんどん無くなって来ているのではないでしょうか。昔なら、仕事量もどんどん増え、会社が大きくなっていく過程で面倒な雑務や手続きや作業も増大していくので、気持ちは別にして部下に任せざるを得なかったのが、そういう環境ではなくなったということです。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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