なぜ、法律事務所のTVCMは、胡散臭いのか?

2010.10.14

ライフ・ソーシャル

なぜ、法律事務所のTVCMは、胡散臭いのか?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

先月、消費者金融大手の武富士が会社更生法の適用を東京地裁に申請した。負債額は約4336億円。過払い金の未請求分を含めると1兆円規模に達するそうだ。そんなニュースの裏では、法律事務所のTVCMがいっぱい流れている。

アメリカでは、弁護士の数多くて、、、訴訟の数を確保しないと、その人達のおまんまが食えない。「ジャパン発見伝」(山本茂著)から抜粋させていただくと、アメリカでの年間訴訟件数は、1800万件。その訴訟に注ぎ込まれる弁護士費用は、約8000億ドル。日本円に換算すると、約80兆円。アメリカの国防費の3倍にあたる巨費となっている。その訴訟費用8000億ドルを維持するために、アメリカの法律事務所の人達は、事件でもない事件を事件にして訴訟を起こす。

考えてみると・・・訴訟で得られる費用って、何も産み出さない。単なる「お金の移動」である。そのお金の移動の上には、敗訴になった人達の恨みや後悔が乗ってくる。

「ヒトを見たら訴えろ」という行為に、大きな付加価値は生まれない。

弁護士は、もともと「基本的人権の擁護」と「社会正義の実現」という非営利目的を使命と規定されている職業である。過払い金を取り戻すのも、社会的正義と言われればそうなのだが・・・そのTVCMの放映費用は、どうやって確保しているのだ・・・。社会的正義を傘にして、営利を追求しているとしか思えない。社会的正義を貫くなら、もっと他の手があるのではないだろうか。

消費者金融業界からの政治献金に塗れた多数の政治家と大手銀行が、グレーゾーン金利にも目を瞑ってサラ金を無制限に拡大させた結果が、経済・生活苦による自殺者・年間8000人を越える世の中である。悪者は、消費者金融各社として・・・法律を盾に天誅をくだす。そんなニュースの裏では、法律事務所がバンバンとCMを流している。どう考えても、、、胡散臭いっ。

クリントン政権時のクエール副大統領は、「我が国は、世界全体の70%の弁護士を創り出しているが、こういうことは必要だろうか。年間1800万件、その訴訟が我が国の経済の国際競争力を失わせているではないか」と疑問を呈している。無策のうちに法曹人口を増やし、過払い金回収のための法律事務所のTVCMが無防備に流れる世の中を放っておいては、日本も、お先は暗い。

訴訟の内需拡大は、きっと、禄なことにはならない。


続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

フォロー フォローして中村 修治の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。