吉野家「牛キムチクッパ」発売延期はなぜ?(試食レポート付き)

2010.10.06

営業・マーケティング

吉野家「牛キムチクッパ」発売延期はなぜ?(試食レポート付き)

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 各メディアによると、吉野家は4日、9月7日に発売した「牛鍋丼」の販売数が1千万食を超えたと発表した。一方で、すき家・松屋との牛丼低価格戦争離脱のための、もう一つの戦略商品「牛キムチクッパ」を約1ヶ月発売延期し、11月目処としたという。その理由と影響は何だろうか。

 発売延期の原因の糸口を探るために、筆者は「牛キムチクッパ」の先行販売店で試食をしてみた。

 吉野家は新メニュー上市の前に、いくつかの店舗で先行販売によるテストを行うのが常である。場所は東京墨田区・錦糸町北口店。「牛キムチクッパ 新登場 280円」の店頭のぼりが深夜23時の夜にも鮮やかである。店内が8割客で埋まっており、注文の割合は牛鍋丼4割・牛丼3割・牛キムチクッパ2割・その他(ナゼか牛シャケ定食など)1割というところ。熱心な牛丼ファンや、新たに取り込まれた牛鍋丼ファンが多いのか、新メニューに躊躇する客が多いのか、牛キムチクッパは出ていない。
 注文をしてみると、「牛キムチクッパ“だけ”でいいですか?」と聞かれる。どうやら、半熟玉子のトッピングがお勧めらしい。このあたりは、牛鍋丼も生玉子を併せるとよりすき焼き風になるという設計と同じで、「アドオン・セリング(追加販売)」を狙っていることがわかる。が、辞退。
 店に客数は多いのに、新メニューも遅滞なく、というより驚くほど早く提供された。さりげないトッピングのお勧め。スムーズな配膳と、「準備に万全を期す」理由は店内オペレーションではないようだ。

 試食をしてみる。ナメてかかると驚くほど辛く、本格派な雰囲気を醸し出している。具材は牛肉、白菜キムチ、タマネギ。牛肉は牛丼・牛鍋丼と同じ下味が付いていることがわかる。キムチもサイドオーダーのものと共通な気がする。タマネギも牛丼系と共通だろう。それらをうまく辛みのスープで合わせて「キムチクッパ」に仕上げてある。味は十分合格点だ。というより、美味い。
 が、ここから先は個人差による評価が大きくなると思われるが、吉野家メニューでかねてから問題になる「量」が気になった。
 全体量は何グラムあるかわからないのだが、全体がスープに浸っており、スプーンで食べるようになっているため、サラサラとすぐに食べきってしまう。辛みが強いので一気食いは無理だが、それにしても、他の丼を食べるよりはあっさり終わる。
 次に気になる点は肉だ。「肉が少ない」も、良く指摘されるところだが、しらたきと焼き豆腐で肉量を抑えた牛鍋丼よりも少なく感じる。肉質は「牛鍋丼」はショートプレート部位ではないので、若干柔らかさに欠ける部分も気になったが、「牛キムチクッパ」はむしろ、サシ(脂)がうまく入った、牛丼用肉のような柔らかさを感じた。その柔らかさ故に、軽やかに咀嚼・嚥下され口腔をサラリと通り抜けてしまう。
 結構辛いので、決定的に物足りなさを感じることはないのだが、280円で「並・トッピングなし」で食するには若干のボリューム不足を感じた。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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