日本はIFRSを適用しない、という期待

2010.09.13

経営・マネジメント

日本はIFRSを適用しない、という期待

野口 由美子

日本はIFRSを適用するのか、もしかしたら2012年に現状の路線を取り下げるのではないか。最も基本的かつ根本的な問題を考えます。

今回はIFRSをめぐる日本の状況について考えてみたいと思います。

日本でもIFRSを扱った記事や書籍、セミナーなどたくさんあり、多くの方がそれらでよく勉強されているという印象を受けます。知識が増えた分、IFRSに対していろいろな不安を抱いている方もたくさんいるようです。今回はそれら疑問について考えてみたいと思います。

疑問①日本は結局IFRSを導入しないのではないか
IFRS を導入するメリットが感じられない企業の方に多いようです。確かに資金調達や事業展開など海外も視野に入れている企業にとってはIFRSはメリットがありますが、そうでなければ、コストがかかる話、にしか思えないのかもしれません。また、アメリカが本当にIFRSを導入するのか、というところに疑問を持たれていることとも関係していると思います。

もうすでにご存知のことと思いますが、現在IFRSに収斂、または適用を行なっていない国は、アフリカ地域を除くと、アメリカと日本ぐらいです。日本だけが今後世界の中で孤立して独自の会計基準を適用していくという状況は考えにくいのではないでしょうか。
アメリカについては、SECがアメリカでのIFRS適用は2015年以降とする考えを表明しており、これがアメリカでの「後退」と捉えられているようです。しかし実際には2015年をめどにIFRSを導入する意欲が政権交代後に示されていると理解すべきではないでしょうか。IFRSとUSGAAPのコンバージェンスプロジェクトは、アメリカが導入の判断を行なう2011年に向けて現在進められています。コンバージェンスプロジェクトがどれだけの成果を上げられるかということが重要になってくると思いますが、アメリカは着実に動いてきていると考えるべきです。

疑問②IFRSの日本向け解釈指針が作成されるのではないか
原則主義のIFRSは解釈が難しく、しかも日本の慣行に特別配慮しているわけではないので適用には判断が必要となります。日本の会計基準のような細則や実務指針がないのです。そこで解釈指針のようなものが日本向けにできるのではないか、と期待されている方がいらっしゃいます。

現状では金融庁もASBJも公認会計士協会も、あまりそのような指針を作ることは考えていないようです。そもそもIASBがそのような国別の指針などを作ることを反対していて、そのような指針を各国で作るとたくさんのIFRSが存在することになってしまうと懸念しているのです。日本に対しても指針を作らないことを勧めています。日本としては、今更この路線からはずれたくないのではないかと思います。

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