掃除機11万5,500円也。

2010.09.03

営業・マーケティング

掃除機11万5,500円也。

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

手元に自由なお金が11万円あったら、何に使うだろうか。夏休み前のタイミングだったら、「旅行費用」にと思うかもしれない。何かモノを買うとしたら、「家電」と考える人は多いだろう。しかし、「家電」の中で「掃除機」に11万円を使う人という人はいるだろうか。

 三洋電機が11万円(税別・税込み11万5,500円)の掃除機を発売するという。
 <空気までお掃除するクリーナー 0.08μm以上の微粒子をほぼ100%キャッチへ進化した空間清浄サイクロン「airsis(エアシス)」を発売>(9月1日同社ニュースリリース)
 http://jp.sanyo.com/news/2010/09/01-1.html

 「airsis(エアシス)」は同社が2007年から発売を始め、改良を重ね、性能を高めてきた「サイクロン型」の掃除機シリーズだ。紙パックを使わない「サイクロン型」の掃除機の普及率は現在40%にのぼるという。(同リリースより)
サイクロン型の効用は、吸気が紙パックを通過しないことから、パック内に溜まったゴミやホコリで吸引力が衰えることなく、その臭いを排気中に混入させないことにある。草分け的な存在としては、海外メーカーのダイソン社が有名だ。1990年代前半、紙パック式の安価な掃除機がほとんどであった日本市場に、独自の「サイクロンテクノロジー」で参入。「吸引力が衰えない、ただ一つの掃除機」というポジショニングで、7~8万円という当時としては信じられないような高価な価格を設定した。確かな吸引力をはじめとした性能と、メカニカルなデザインでファンをつかんでブランドを確立したダイソンに対し、日本メーカーもサイクロン型を採用して追撃を開始したのが2000年以降であった。

 高価なことで知られるダイソンの掃除機だが、その旗艦モデルである「DC26 モーターヘッド コンプリート」でさえ、同社のオンラインショップでの価格は税込み87,800円だ。エアシスの最新型はそれさえも軽く超える価格設定をしている。本当に売れるのだろうか。

 エアシスという商品のもたらす価値を「製品特性分析」で考えてみよう。
 掃除機の中核たる便益は、<部屋をきれいに掃除すること>だ。それを実現するために欠かせない実体価値が<ゴミやホコリを残さない強力な吸引力>である。中核的便益とは直接関わりはないが、製品価値を高める付随機能は、ダイソンなら<デザイン>である。
 では、エアシスの場合の<空気清浄機能>は、部屋をきれいに掃除することとは直接関係ないと考えれば、付随機能となる。しかし、そもそもの「きれいにする」ということのコンセプトが三洋電機の場合、独特なのだ。
 三洋電機のエアシスは<、お掃除の常識であった床面だけの掃除スタイルから、床も空気も掃除する“空間清浄スタイル”>(同)という独自価値を従来から訴求している。新発売される最新型では<0.08μm以上の微粒子までほぼ100%キャッチ><浮遊菌を99.9999%、浮遊ウイルスも99.999%除去>(同)という性能を実現している。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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