ニーズギャップに愚直に応えよ!焼きそばJANJANのヒミツ

2010.08.20

営業・マーケティング

ニーズギャップに愚直に応えよ!焼きそばJANJANのヒミツ

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 大ヒット商品、エースコックのカップ焼きそば「JANJAN」が発売以来わずか半年で製品リニューアルをする。そこに隠されたワケとはなんだろうか?

 さて、「JANJAN」の今回のリニューアルのポイントは何だろうか。ズバリ、「具の増量」だ。
リリースには<シャキシャキした食感の良いキャベツを20%増量し、程よく味付けした肉そぼろで仕上げました>とある。
 従来のカップ焼きそばは、内容量を増量し、最大で通常サイズの倍というメガ盛り商品を出したり、ソースに加えてマヨネーズを添付するなどのフレーバーのバリエーションを加えたりという差別化が主であった。
 実はエースコックという会社はメガ盛りのカップ麺のパイオニアでもある。1988年に大型カップ麺の先駆けとなった「スーパーカップ」を発売し、翌99年にはさらに大型化した「スーパーカップ1.5倍」を発売。若年層の定番メニューとしての地位を獲得した。さらに、2005年にはメガフードブームの火付け役の一つともなった「スーパーカップ2.0倍」を発売し話題を呼んだ。しかし、ことカップ焼きそばは「メガ盛り」に走ってはいない。なぜか。それは、「ターゲットのニーズはそこではないから」だ。

 昨今のカップ麺はノンフライ麺の使用や、具材の強化、有名ラーメン店とのコラボレーションなどによって、より本格的なラーメンに近づこうとする潮流がある。しかし、カップ焼きそばにおいてはあまり進化が見られなかったのが「JANJAN」がヒットした背景でもある。カップ焼きそばは、屋台の焼きそば同様に、「具が少ない」。非日常的シチュエーション、ハレの日である「祭り」の中で食べるならそれもまた善しであるが、ケの日、日常生活の中でのそれは、とても悲しい。
 今までそれでも特に文句を言う人がいなかったのは、屋台の焼きそば同様に、「カップ焼きそばの具なんて、こんなもんだろう」共通認識、お約束みたいなものが存在したからだ。メーカーと、カップ焼きそばの固定的なユーザーの間で。しかし、エースコックは若年層という新たなターゲットの取り込みを図ったのだ。そこに、共通認識やお約束はない。本格化するカップ麺と比較して見劣りする具材は、「JANJAN」の新規性に満足しているユーザーの間でも、やがて不満として噴出する可能性が高い。

 「具材のキャベツを20%増量しました」。
 一見、何ということはない、当たり前に思えるリニューアルは、エースコックが「カップ焼きそば離れをしている若年ユーザーを取り込む」ということに見出した商機を、そのユーザーを将来的にも安定的に囲い込むために検討した結果であるのだ。ユーザーのニーズギャップに応えた新商品を発売し、さらにその先のニーズギャップに先回りして応えるリニューアルを行う。
 マーケティングの基本は「まず、顧客を見る」ことである。その意味からもこの事例の意義は深い。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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