ソフトウェアビジネスとIFRSの収益認識

2010.08.02

経営・マネジメント

ソフトウェアビジネスとIFRSの収益認識

野口 由美子

2010年6月に国際会計基準審議会(IASB)が公表した国際会計基準(IFRS)の収益認識に関する公開草案はソフトウェアビジネスにも影響を与えます。何が問題になるのでしょうか。

2010年6月に国際会計基準審議会(IASB)が公表した国際会計基準(IFRS)の新しい収益認識基準についての公開草案では、企業がいつ、いくらの売上を計上するのか、統一的な基準を定めています。この公開草案ではあらゆる取引に共通するアプローチを提供しています。(アプローチについてはこちらの記事を参考にしてください。)ただし、この統一されたアプローチは原則を定めているに過ぎません。実際の企業活動はさまざまで、個々の取引についてどのように適用すればいいのか判断に迷うところです。

今回はソフトウェアについて考えてみたいと思います。ソフトウェア、コンテンツといった形がないものについての会計処理は伝統的な会計の考え方をそのままあてはめるのが難しく、近年の会計ではこのような無形のものをどのように扱うのかが重要な問題と考えられています。

新しいIFRSのアプローチに従うとソフトウェアのライセンスが排他的であるかどうかがポイントとなります。
例えば、ソフトウェアの経済的耐用年数全期間にわたって排他的な権利を顧客に与える場合、これは知的財産の販売と考えます。顧客に権利を付与した時点に売上を計上することになります。
現実にはこのような場合よりも経済的耐用年数よりも短い期間の使用許諾の方が多いと思います。この場合は、その権利が排他的か否かによって処理が変わってきます。排他的な権利である場合は、履行義務は時間の経過とともに果たされていくと考えるので、時間の経過に伴って売上を計上します。
排他的でない権利である場合は、履行義務は使用許諾の付与のみに関連すると考えます。顧客が使用許諾が得られた時点で売上を計上することになります。

ちなみに、日本の会計基準では「研究開発費等に係る会計基準」の中にソフトウェアについての会計処理が定められています。また売上の処理については、「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」が参照されることが多いと思います。
現行の日本基準では、使用許諾が排他的であるか否かという判定が求められていません。この判定により売上の計上基準が変わる可能性があります。

IFRSを実際に適用していくにあたっては判断に迷うところがたくさんあるのですが、ソフトウェアライセンスなどの知的財産権についてはIFRSの適用が難しい分野の1つだと思います。
 
野口由美子

株式会社イージフ 
http://aegif.jp/

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