日産自動車の工場停止を考える!

2010.07.21

経営・マネジメント

日産自動車の工場停止を考える!

野町 直弘
株式会社クニエ プリンシパル

最近の調達・購買関連のホットなトピックは「超入手困難」です。 このような状況を象徴するようなホットなニュースが飛び込んできました。「日産自動車がECUの納期遅れで工場を停止」です。

潮目が急変したというか、最近の調達・購買関連のホットなトピックは「超入手困難」です。

先日ある調達部門長が多く集まった研修会に参加する機会がありました。またつい先頃行われた購買ネットワーク会でも多くのバイヤーから、「部品が入らなくて困っています。」という声が多く聞かれました。
それも一部の電子、電気部品や汎用品だけでなく、素材やカスタム品など多くの領域に「超入手困難」が広まっています。
原因はそれぞれの品目毎に微妙に異なるようですが、一言で言ってしまうと「供給力不足」です。
これはリーマンショックで急激に減った需要に合わせて生産能力調整を進めていったところ、今年の前半から新興国を中心に景気が回復し、その後日本企業の生産回復が始まった段階ではもう供給能力に余力がありません、ということのようです。その上中国での工場ストも影響を与えているようです。

このような状況を象徴するようなニュースが今週飛び込んできました。
「日産自動車がエンジンコントロールユニット(ECU)の納期遅れにより国内4工場で3日間ラインを停止する。複数車種で約1万5000台分の影響が出るとのこと」
私も自動車会社出身なので、完成車メーカーのラインを停止することが、どれだけ凄いことか理解しています。それを3日も停止する。驚きました。そしてもっとびっくりしたのが次の日の新聞での情報です。
「ECUの納期遅れの原因は欧州半導体S社のカスタムICの供給不足が原因であり、S社はECUメーカーに対して契約数量の2/3しかできないことを一方的に通告してきた。ECUメーカーも原因究明にあたっているがS社から納得できる説明がない。S社の主要顧客リストには、今回のECUメーカーの名前がない。」
ようするに原因が分からないので解決する兆しがないのです。

今回のような超入手困難の事案に対してどのような対応をすればよいか、というものが調達リスクマネジメントという考え方です。
但し、どんなITシステムも業務手法もこのような状況が起きてしまった後では根本的な対応策にはなり得ません。また事前の策としてもマルチソース化、標準化のような実現するのに多くのコストや手間が必要なリスク軽減策しかないのが実態です。
今回購買ネットワーク会でもこのような「超入手困難」な状況をどう解決すればよいか?というディスカッションを多くのバイヤーさんと行いました。やはりマルチソース化、標準化、長期契約化、フォアキャスト情報の共有、買取契約などの対策案がでてきたのですが、その中で営業出身の若手バイヤーの方から興味深い話がありました。
「多くのバイヤー企業は値下げをしてくれ、とか短納期対応をしてくれ、とか要求しかしない。営業の立場から言えば、買い手企業が何をしてくれるのか、自分の会社にとってこの会社と取引することにどのような長期的な意味があるのか、を考えている。それがなければ、優先的にモノを回すことなんてしない。」ということでした。
「超入手困難」の状況下、優秀なサプライヤからモノが買えるような関係性を作っておく、つまりサプライヤマネジメントの重要性をそのバイヤーさんは自らの経験から話してくれたのです。
このように「超入手困難」に対する有効な対策の一つは「サプライヤとの関係性つくり」であることを再認識しました。同時に、このような関係性は今作ろうとしてもできないのです。皆が需要が減り、苦労していた一年前にこのような関係性を作れてなければダメなのです。

供給リスクマネジメントは言いかえれば二次サプライヤの状況も含むサプライヤ情報の把握であり、サプライヤとの関係性作りそのものなのです。

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野町 直弘

株式会社クニエ プリンシパル

NTTデータグループのコンサルティング会社である株式会社クニエの調達購買改革コンサルタント。 調達・購買分野に特化したコンサルティングを提供している株式会社アジルアソシエイツの元代表。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルがサービス提供を行います。

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