自動車販売不振は「買わない自由」の顕れか

2007.10.04

営業・マーケティング

自動車販売不振は「買わない自由」の顕れか

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

「新車販売27年不振ぶり低水準」「軽も失速、縮小止まらず」の見出しが10月2日の日経新聞に躍った。日本車勢の海外での活躍とは裏腹な、国内販売状況。様々な原因が考えられるが、やはり生活者の購買理由に目を向けてみるべきだろう。そんな視点で少し「ニュースの理由」を考えてみたい。

■今日までの自動車購入の変遷

記憶を辿れば、ここ数年の自動車販売はある特徴を示していた。
まず、セダンが売れなくなった。代替としてMPVという、いわゆるレジャー目的の車に注目が集まり、高級セダンからの乗り換えといったパターンに注目が集まった。
「カローラ→コロナ→マーク2→クラウン」という「セダン出世魚購買」の崩壊といわれ、購入者の価値観の多様化がその理由であるといわれた。

次に小型化の波を迎える。トヨタの欧州戦略車「ヤリス」が日本市場で「ヴィッツ」として上市された99年。従来の小型車の概念を塗り替える、広い室内と低燃費が市場の注目を集め、長年販売台数のトップを占めていたカローラも遂にその座を明け渡した。また、02年に日産のマーチ、ホンダのフィットが後続し、各社とも小型車を大きな戦場とした。衝突安全性能も向上したことから、生活者も自動車に思い入れのある層でなければ、「広くて低燃費で安全」な小型車がスタンダードとなっていった。

さらに、小型化の波は止まらなかった。安全基準の引き上げに伴い車格も大型化して小型車と遜色なくなった軽自動車は、税金などのランニングコストの安さから小型車を猛追。総販売数を大きく伸ばした。ここに至り、生活者の自動車購入基準は経済性が大きな比率を占めることとなったのだ。

一方で、輸入車ではBMWが過去最高の販売台数を記録するなど、いわゆるプレミアムカーの売れ行きは好調。トヨタのレクサスも当初の目標には届かないものの、実際には今日ではトヨタ全部ランドが販売減となる中、唯一伸びているブランドだ。

■確実に変化した生活者の購買動機

ここまでをまとめると、上記のようにプレミアムカーを購入する層を除き、多くの生活者が「自動車へのこだわりの喪失」によって「実利指向」を強め、結果として軽支持となったのが一連の流れだと言えるだろう。
さらに見逃せないのが、一連の流れと共に伸長していった、自動車の買換え年数である。バブル崩壊以降、デフレ不況、その後の景気回復も家計への恩恵は乏しいことから、生活防衛意識が高まり当然のように自動車の買換え年数はどんどん延びていった。
10年以上経過した車は毎年車検であったのが、それ以前と同じく2年毎の車検で済むように改正されたことから、10年越えの車も珍しくなくなってきた。
「まだ乗れるから買換えない」。考えてみれば当たり前なことであるが、そこには生活者の「車への関心の低下」がありありと見て取れる。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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