ピンポイントを狙う「エキナカ・フレーバーティー」戦略

2010.06.12

営業・マーケティング

ピンポイントを狙う「エキナカ・フレーバーティー」戦略

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 エキナカ専用のフレーバーティー飲料が6月15日に発売される。JR東日本管内、1万台の自販機限定という極めてニッチな展開は、実はピンポイントにターゲットを絞るお手本的な展開であるのだ。

 ある商品のマーケティングの全権を任され、「とにかく少しでも販売実績を上げるように」と命じられたら、まず何をするだろうか。製品を改良しようか、価格改定をしようか、販売チャネルを拡大しようか、広告を斬新にしようか…あれこれと施策を考えるだろう。しかし、しばし考えた後に、選択肢の多さと決め手のなさに呆然とするのではないだろうか。

 迷うことなく、しかも成果を上げるためには「勝てる」ところを見つけて集中することだ。つまり、セグメンテーションとターゲティングである。 マーケティングにおいて、極めて基本中の基本であるが、実はピンポイントに絞り込んで、そこに集中して施策を展開することは勇気がいる。いや、自分自身は納得のいく絞り込みプランを作ったとしても、とかく周囲の人や上司から「そんなに絞り込んだら売れなくなるじゃないか!」と言われて挫けそうになるのだ。
 
 新発売される「エキナカ専用のフレーバーティー」は、JR東日本ウォータービジネスが運営するエキナカ飲料自販機acure(アキュア)で展開される。商品名は「FAUCHONマスカットティー」。アサヒ飲料との共同開発で、高級紅茶ブランドのFAUCHONの名を冠し、「夏にふさわしい華やかなマスカット果汁の味わい」が特徴だという。
※ http://news.livedoor.com/article/detail/4819550/
 (livedoor news / PR TIMES 6月10日)

 この商品はズバリ、「都市部在住の通勤通学女性客・さわやかな朝にプレミアム感の高い飲料で1日をスタートしたいという価値観を持っている人」というようなターゲット像を持っているといえるだろう。単なる性・年齢というデモグラフィックなセグメント軸だけでない、価値観や行動までを考慮した極めて絞り込んだターゲティングである。
 絞り込んでも外さないのは、JR東日本ウォータービジネスが自社の特徴に合わせたターゲット評価に基づいた検討をしているからに違いない。

 ターゲット評価の「5R」という考え方がある。
 「Realistic Scale(市場規模)、Rate of Growth(成長性)、Rank & Ripple Effect(優先順位と波及効果)、Reach(到達可能性)、Rival(競合状況)」の5つのRで、ターゲットとしての魅力度と適切性を検討するのである。
 「FAUCHONマスカットティー」この商品のターゲッティング戦略を以下で検証してみよう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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