日本市場のこれから:「あなたの顧客は何歳ですか?」

2010.05.26

営業・マーケティング

日本市場のこれから:「あなたの顧客は何歳ですか?」

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 喜多方ラーメン「坂内」「小坊師」を全国で56店展開する株式会社麺食が、若者向けラーメン店を開くという。そこからは、ラーメン店や飲食業界だけでない、今日の日本市場全体の課題が見えてくる。

 日経MJ5月24日フードビジネス欄に「喜多方ラーメン 若者客開拓へ新型店 麺食 量重視、メニュー拡充」の見出しで記事が掲載されていた。その理由は、「来店客が中高年や高齢者に偏っているため」であり、「メニュー、量、内装の見直しで若者の来店を促し、客層を広げる」狙いであるという。

 麺食が展開する2ブランドの喜多方ラーメンチェーンに行ったことがあるだろうか。
 同店は、喜多方地方の蔵をイメージしたナマコ壁の外装と民芸調の内装が特徴だ。肝心の味は、はもちもちシコシコの「平打ち熟成多加水麺」。 豚骨の旨味がしみる透明スープ。 余分な脂を落とした、とろけるような特製焼豚。それらが一体となって醸し出す、あっさりとコクが同居した深い味わいのラーメンなのである。

 名物である焼豚ラーメン850円也は、丼からあふれんばかりに焼豚が麺を覆い尽くしている迫力メニューなのだが、何と、客層は「他のラーメン店より高齢者が多く、30~40代が4分の3を占め、10~20代は2割にとどまる」(日経MJ)という。
 若い客層がいないのは、同店は主に「ボリューム不足」に起因するとして、セットメニューの拡充と量の多いメニューを新規開発するという対応を中心に据えた。客単価は現状より20円アップの750円とするようだが、ボリュームアップを考えると、実質値下げに近いかもしれない。

 新戦略の正否はまだわからないが、同社の戦略転換のきっかけとなった危機感は、多くの企業が学ぶものがあるだろう。
 顧客は歳を取る。しかし、馴染み客・固定客が多いほど、その変化には気づきにくい。従来の常識で考えれば、「高齢者にラーメン」はあまり親和性がないように思い、通ってきているのは元気な顧客ばかりだと思い込んでしまう。ところがどっこい、ラーメンが国民食となった高度成長期あたりでその味を占めて、ラーメン大好きになった人々ももはや老人だ。同様な例では、ファストフード店に結構な勢いで高齢者がいるのも同様だ。しかし、「老い」は人に不連続で訪れる。
 例えば喜多方ラーメンであれば、元気いっぱいに、肉があふれんばかりの焼豚ラーメンを平らげていた客が、「最近ちょっとキツイかも…」とぱったり来なくなってしまうこともあり得るのだ。同社の危機感はまさにそこにあったのだ。
 ラーメン店ばかりではなく、多くの高齢客は嗜好の変化だけでなく健康上の理由などから、離反ではなく来店できなくなるリスクが常に存在するのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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