サプライヤ丸抱えにNo! ヨルダン政府、韓国電力公社案を拒絶

2010.05.18

経営・マネジメント

サプライヤ丸抱えにNo! ヨルダン政府、韓国電力公社案を拒絶

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

ヨルダン政府は、現在進めている原子力発電所のサプライヤ選定において、韓国電力公社が韓国政府とともに進めていた提案を拒絶すると発表しました。 韓国は昨年末、アラブ首長国連邦(UAE)より原子力発電所の建設を受注しており、今回もその時と同じ手法でヨルダン政府からの受注を狙っていました。 なぜ、韓国の営業提案がUAEでは上手く嵌り、ヨルダンでは嵌らなかったか、今回はその背景を探っていきましょう。

それでも分離分割方式での発注があまり進まないのは、その時選んだ別の発注方式が正しいからではなく、分離分割発注を進めるだけの能力が発注側にないか、その調達材が貴社にとって取るに足らないもので、調達にあまり力を掛けなくてよいと考えているかの何れかケースが殆どです。

確かに、分離分割発注は手間が掛かりますが、その分だけ、調達の成果も非常に大きくなります。また、難しいといって避けてばかりいては、いつまでたっても、必要な能力が身につきません。

今回のケースでヨルダン政府が韓国側の提案を毅然とした態度で拒絶したのは、たとえ難しくても、原子力発電所の建設は重要な案件であり、必要な調達・購買能力を確保していこうというヨルダン政府の強い意志の現われと受け止められます。

今回のような調達案件の進め方の検討は、弊社で言うところの、「調達案件戦略」の議論になります。調達戦略がどのサプライヤからどうやって買うかを定めるのに対し、調達案件戦略は、どうやってサプライヤを選定するかを決めていくことにより、選べる調達戦略の幅を定めます。戦略論や、意思決定論、ファイナンス理論の何れにおいても、代替案のオプションが多い選択肢ほど価値があります。

調達戦略の考え方はだいぶ浸透してきましたが、調達案件戦略という考え方はまだまだこれからです。調達戦略も大事ですが、それ以上に、どうやって取引する企業を選定するプロセスを進めるかの調達案件戦略の方が、選べる調達戦略の取引の成果を大きく左右すること、選べる調達戦略の幅を広げるような調達案件戦略が優れた調達案件戦略であることを、これを機会に頭に入れておいて頂ければと存じます。

中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長

調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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