日本で「ソーシャルパブリッシング」は根付くか。

2010.04.25

営業・マーケティング

日本で「ソーシャルパブリッシング」は根付くか。

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

日本の電子書籍化の方向が見えてこない。自由に公平に電子書籍を活用する日はいつくるのか。

出版流通を極論すれば、情報を発信したい側と受信したい側のマッチングを図るのみのはず。
「日本電子書籍出版社協会」野間理事の会見でも「著作者の利益・権利を確保すること」、そしてもうひとつは「読者の利便性に資すること」と謳っている。この目的があるのであれば、ユーザーニーズを満たすプラットフォームの構築に進むしかないはずだと思うのだが、そうした動きは見えてこない。

情報発信をしたい側にとって、各界の先生方は別にして、一般ビジネスパーソンが現在の出版流通ルートの中で書籍を発刊する壁は非常に高い。販売部数の見えない出版物を出版社に持ち込んだところで、まだ編集が入っていない書籍の完成度は高くもなく、相手にされないだろう。また、個人でニーズを持つユーザーにアプローチすることは困難を極める。個人で情報発信するには、ブログやソーシャルメディアを活用するしかない。起きているのは、出版社側がよく言う「活字離れ」ではなく「書籍新聞離れ」だ。

情報受信側から見ても、多くのビジネスパーソンは、企画やレポート、学習、調査のために書籍を購入する(現在は経費削減の嵐でそれもままならないが)。そうした情報や知識が適切なカテゴリー編集と検索機能によってデジタルデータとして存在すれば、何倍もの生産性があがると感じていることだろう。有料無料もなくこの利便性とクオリティの保証を求めているはず。
さらにそうしたデータに対し、コメントや過去ユーザーのアドバイスが掲載されレコメンド機能やユーザー同士のコミュニケーションが図れるとするならば、仕事のクオリティは一気に高まるだろうし、新しいアイデアや情報共有が図られることだろう。

日本でも電子化の動きは各社各様で動いていないことはない。
朝日新聞出版社はWEB新書として「Astand」を立ち上げた。創刊記念価格として、6月末までは一律105円で販売するそうだが、現在はPCでしか見ることはできず、わずかに34商品だ。

立ち上げ早々あまりいい評価を聞かない日経新聞の有料化は値段の高すぎに加え、個別記事へのリンクの禁止という方策でさらに評価を落としている人は多い。

肝心要の日本電子書籍出版社協会のWebサイトも野間理事の会見の内容が掲載されているだけで、何の進展も見えてこない。

このままでは出版社が長年かけて蓄積してきた良質のコンテンツが埋もれてしまうばかりで、出版社が言う「文化」が廃棄されてしまう運命となる。そして追い討ちをかけるように、中小の出版社は、書店の廃業倒産による返品に頭を抱えていると聞く。

作家にも編集者にも運営者にも、そしてユーザーにも望まれるプラットフォームの誕生をみんな待っているはず。

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