一人勝ちアウディの超強気と徹底

2010.04.14

営業・マーケティング

一人勝ちアウディの超強気と徹底

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

アウディの勢いが止まらない。はじめて日本での輸入車シェア10%を突破し、この3月は世界的に月間記録を達成するなど、破竹の勢いを続けるアウディ。その徹底したブランディング戦略を探る。

日本では放送されていないが、話題となったテレビCMが2本ある。
1本目は、アウディの米国法人が実施した『ザ・スペル』(呪縛、呪文・・・)というタイトルのCMだ。フェラーリにあこがれる少年やレクサス、ベンツ、BMWに乗る人たちが登場し、退屈そうにしているところに、それぞれの車種に対応するアウディ(S4やQ5など)があらわれ、全員が目を輝かせる、といった内容だ。そして「アウディはBMW、ベンツ、レクサスよりも成長している」というメッセージが表示される。『ザ・スペル』とは「アウディによって呪縛は解かれた」という意味なのだろう。

もう1本は、タイトルを『フレンドリーコンペティション』といい、一言でいうとBMWとの比較広告だ。こちらはタイトルはおだやかだ。BMWのことをいい意味でのライバル、日本だとさしずめ「お互い切磋琢磨してきた間柄」とでもいう相手か。しかしメッセージは強烈だ。「『S4』『A6』『Q5』は、BMWよりも優秀だ」と露骨に打ち出される。

日本ではここまでの比較広告にはまずお目にかかることはないが、非常に明確なターゲティング戦略であることは間違いない。誰にとってもこれほどわかりやすい例はない。
日本で行われるキャンペーンもプレミアム感は徹底される。4月8日から実施されている、「アウディ プレミアム カーシェアリング」という試乗モニター募集でも、「泉ガーデン」という富裕層が集うプレミアムな場所で「Vorsprung mail」と名づけられたメールマガジン購読者に絞って展開される。(メルマガ購読者に絞るという点もロイヤリティをくすぐる)「Vorsprung」とは、先進性を表すアウディのブランディングで、すべてのユーザー接点にこのコンセプトが用いられる。
環境戦略も先進的だ。2008年から「カーボンオフセットプログラム」という自動車メーカーでは非常に高度で独自の取り組みを車種を限定して行ってきたが、同様の取り組みを4月から全車に展開する。環境意識に関しても、グレードの高い本物志向の顧客がターゲットだ。

そして、アウディの優位性は、社内でのマーケティング活動にも現れている。ブランディングや企業理念はともすると抽象的で中途半端な展開に終わることが少なくないが、アウディジャパンでは、年に3回全員参加でこの「Vorsprung」について徹底的に考える日が設けられているという。自分の役割におけるこのブランドの意味、具体的な価値について議論を重ねることで、全員がどの立場においてもこのブランドについてお客様に自分の言葉で伝えることができる。
私はブランドの価値は社員の深い理解とコミットにこそあると思っている。イメージと実際の対応窓口とのギャップを「ブランドギャップ」として顧客は感じるのであって、そこで崩れたブランドイメージを復活させるのはきわめて困難だ。

アウディの徹底的なターゲット戦略と、ブランド浸透の社内外の取り組みに学ぶ点は多い。

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