『アクターズ・スタジオ・インタビュー』を良質な啓発材とする

2010.02.15

仕事術

『アクターズ・スタジオ・インタビュー』を良質な啓発材とする

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人に勧めたい良書はたくさんあるが、人に勧めたいテレビ番組となるととたんに数がなくなる。そんな中で私が推すのはこの番組だ。「セルフ・エスティーム」、ゲーテの言葉などとともに紹介する。

仕事を選び取ること、
仕事をつくり出すこと、
仕事によって自分を開いていくことは、
現代社会に生きる私たちにとって、とても重要なことだ。

しかし、仕事・働くことに関する教育(私は啓育という言葉で表現したいが)は
社会の中でいっこうにうまくなされない。
親も語らないし、教師も避けている、上司や経営者は利益のことで忙しい。
書店店頭は「成功のための○○の法則・ルール」といった
即席ハウツー伝授が雨後のタケノコ状態であるし、
テレビは思考不要のバラエティ番組に埋まる。
(まぁ、これらは悪でないにせよ、こればっかりの世の中ではどうだろうと思う)

そんな中、「これは(録画してまでも)観た方がいいよ」と周りに勧めたい番組がある。
それは、NHK衛星チャネルで放映している
『アクターズ・スタジオ・インタビュー』だ。
(米Bravo Media社製作:番組原題は“Inside the Actors Studio”)

番組の詳細は、番組HPや「ウィキペディア」に任せるとして、
とにかくこの番組は啓発に富んでいる。
(もちろん視聴者側の意識の高さや感度によるが)

つくりとしてはインタビュー形式の簡単なものだ。
しかし、インタビュイー(米国の映画俳優・映画監督たち)と
インタビュアー(ジェームズ・リプトン氏)、そして聴衆(アクターズスタジオの学生たち)
の三者が実にいい雰囲気をつくりあげて番組は進行していく。

語り手がハリウッドの大俳優・大監督なんだから面白くて当たり前と思うかもしれない。
しかし私は、
その毎回の登場者から発せられる映画・演技ネタ(話の情報)を面白がるより、
その登場者の役者としての働き様、人間としての生きる姿勢をこそ面白がってほしいと思うし、
学びとってほしいと思う。
なぜなら、この番組は映画関連番組というより
キャリア・生き方を学びとる番組として観た方が収穫が多いからだ。

加えて、その登場者の働き様・生きる姿勢のエッセンスを巧みに引き出そうとする司会者、
さらにそれを固唾をのんで聞き入る学生たち。
番組終わりにある学生からの質問時間も実に凛としたいい雰囲気である。
なぜなら、彼らは学生といっても、のほほんとした学生ではなく、
熾烈な米国の映画界・演劇界でのし上がっていこうと戦っている人間たちだから、
質問のひとつにしても眼差しが真剣で鋭い。
―――この空間内に満ちる求道的な熱がこの番組の良質なところである。

私が米国留学時代にひしひしとその威力を感じたのは、
個々の欧米人が醸し出す「セルフ・エスティーム」(self-esteem)と呼ばれる心的態度である。

次のページ彼らの一人一人が「強く自分でありたい」ということを追求...

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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