志力格差の時代〈下〉~社会的起業マインドを育め

2010.01.17

組織・人材

志力格差の時代〈下〉~社会的起業マインドを育め

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

国力の衰えは志力の衰えから始まる。志力を育むためには、「ありがとう」を言われる原体験と「社会的起業マインド」の涵養が必要である。

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世の中に多種多様にある仕事を次のように分けてみる。例えば―――

「“ありがとう”を言われる仕事」
「“ありがとう”が全く耳に入ってこない仕事」

さて、みなさんの仕事はどちらに分類されるだろうか。
私が独立自営を始めて最もよかったことは何かと言えば、
それは(恰好つけでも何でもなく)仕事で“ありがとう”を言われるようになったことだ。

ありがとうを言われると、働く上でどんな心理変化が起きてくるか。

1)
そんなに喜んでもらえるなら、もっとこうしてあげよう、あれをやってあげようとなる。
だから、(無料という意味での)サービス仕事・ボランティア仕事がついつい増える。
しかし、心は晴れ晴れしてやっている。
(サラリーマンの間で問題となっているサービス残業とは全く異なる類のものだ)

2)
へこたれなくなる。
いまだ収益基盤のか細いビジネスで、不安定にふらつきながらやっているが、
お客様の「ありがとう。また来年もよろしくお願いします」の声が聞こえてくるので、
少なくとも、もう1年踏ん張ろう、さらにもう1年踏ん張ろうと、進んでいける。
(悲壮感に陥らないところがいい)

3)
仕事で目指そうとする「想い」がより大きくなる。
ありがとうを言っていただいたお客様や
ありがたいと感じてくださった共感者の方々が、
「もっとこうしたらいいんじゃない」とか
「こういう形もあるんじゃないかしら」とアイデアをくれたり、手伝ってくれたりする。
酒を酌み交わしながら「想い」を共有してくれもする。
すると、自分一人で抱いていた想いが、いつしか複数の想いとなり、
その内容もどんどん膨らんでいく。

このように、仕事で「ありがとう」を言われることの影響はとても大きい。
心が晴れ晴れする、強くなる、想いが膨らんでくる―――いいことづくめだ。

ここで私なりのひとつの結論を言えば、

ありがとうを言われ続ける環境にあると、
人は働く動機を「利他動機」にシフトさせる。
そして志(想い)が膨らむ回路に入る。
さらに、その志がいろいろな人たちによって共有されるとき、もっと大きな力になる。

ちなみにその逆もまた真なりで―――

ありがとうを言われない環境にあると、
人は働く動機を「利己主義」にシフトさせる。
そして我欲(閉じた執着心)にとらわれる回路に入る。
さらに、そんな我欲にとらわれた人たちが世に多くなりすぎると、大きな災いが起こる。

* * * * *

とにもかくにも、“ありがとう”の力はすごい。
本記事のメインテーマである「志力格差」に話を戻すと、
「志力」(=想う力・志す力)の格差をなくすためにひとつ重要なことは、
特に若い世代に
「ありがとう」を言われる仕事体験を一度でも、そしてできればどんどんさせるということだ。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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