どうなる住宅産業②  家は買うものか、作るものか?

2010.01.08

営業・マーケティング

どうなる住宅産業②  家は買うものか、作るものか?

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

一向に回復基調に乗らない新築住宅業界。車、家電商品に続きエコポイント制度が始まるが、家電商品と同じような政府のバックアップ施策で、本当の回復が生じるのだろうか。

一向に回復基調に乗らない新築住宅業界。車、家電商品に続きエコポイント制度が始まるが、市場活性化の起爆剤になるのか。車産業と同様、裾野が広く影響度合いが大きな業界だけに、注目は大きい。
しかしながら多くの人は、住宅は一生に一度か二度の大きな買い物だ。家電商品と同じような政府のバックアップ施策をとることで、本当の回復が生じるのだろうか。

住宅産業はクレーム産業だともいわれる。新居に越したときはしばらく満足感が続くものの、住み続けるにしたがってあちこちに不満箇所が出て、やがて大きな不満・クレームにつながるという理屈だ。だから営業マンは自分が受注した家には行きたがらないという人もいる。

一方、「やがて」ではなく、新築で家を建てた直後からクレームをあらわにする施主も多い。一般にロイヤリティの高い人は沈黙する傾向はあるが、顧客の声を集めてメーカー評価を打ち出すWebサイトを見ると、想像を上回るクレームが列挙している。大手メーカーゆえに次の顧客の獲得には問題がないのだろうが、これが年間10~20棟を施工する零細工務店であればひとたまりもない。しかもそのクレームは、ほとんどが商品そのもののクレームではない。営業や会社の体制・姿勢、サービスといった、販売・マーケティングに関わることだ。これは明らかに提供のしかた、売り方の問題であり、高品質の住宅をせっかく提供しているにもかかわらずこうした問題によって双方が不満足に陥る事態は大きな損失だ。

新築住宅の市場は大きく縮小している。単純比較はできないが、1990年には170万戸あった戸数が、2009年は100万戸を切るといわれている。4割以上の縮小だ。(国土交通省より)新築住宅を購入することができない世代が増えているのは間違いないことだが、明らかに住宅マーケティングの転換期にある。

土地の問題や資金面の問題はあるにせよ、そもそも分譲マンションや建売住宅ではなく、持ち家を建てるというのは、一生をすごすことになる家だからこそ自分なりの暮らしを実現する場を築き上げることだ。つまり自分の家族が快適に暮らすためのデザインをし、作りあげるプロセスのはず。しかしながら、多くのハウスメーカーが提供するのは、「作る家」ではなく「買う家」だ。

家は一生の買い物であり、生涯収入の2~3割をつぎ込むといわれる。しかしその割には売り方は一般消費財とほとんど同じだ。タレントを使った大量のテレビCMと、大手量販店にも似た住宅展示場、さらにその場で決済を求める営業アプローチまで、エアコンやテレビを購入するプロセスと基本的には変わらない。

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