電子入札の活用

2009.10.17

経営・マネジメント

電子入札の活用

野町 直弘
調達購買コンサルタント

最近、電子入札やオークションについての関心がまた高まっているようです。 しかしやはりまだオークション=コストダウンという誤解を持っている方も多いようです。

最大の誤解は「オークションを活用すればコストが削減できる」というものです。
考えてみてください。技術、生産、数量、商業的な条件が同じであれば
最終的に決まる価格は「落ち着く」ところなのです。
それを通常の見積合わせではなく、電子的な方法でやりとりをするだけで、
より安く決まることはあり得ないのです。
しかし、これを別の視点で考えると
「オークション=コスト削減」という錯覚に陥ることがよくわかります。

通常見積合わせによる交渉業務は
買い手企業のバイヤーを介して1対n社という形で行われます。
経験者はよくご存知だとは思いますが、かなり手間がかかるものです。
一方で「電子入札」の場合はどうでしょうか?
当然のことながら「仕様調整」「見積条件の調整」等の前捌きの業務は残るものの
「見積のやりとり」「見直しのお願い」等の数回にわたる交渉的な業務は
必要なくなります。
これはオークションのケースですが、
オークションはサプライヤn社間のn対nの競争になるからです。
そうすると従来は手間の問題から
2社からしか見積を入手していなかったところに
より多くのサプライヤを参加させることが理論上は可能になってきます。
つまり競争環境が激化するのです。
つまり、電子であれ、そうでなかれ、競合企業数を増やし
この競争環境を強めることが「コスト削減」につながっているだけなのです。

もう一点「オークション=コスト削減」の錯覚につながるような
理由を説明したいと思います。

先ほど
“技術、生産、数量、商業的な条件が同じであれば
最終的に決まる価格は「落ち着く」ところなのです”ということを書きました。
この「落ち着く」ところ、というのが重要なポイントです。
多くのバイヤーは大体自身でこの部品、原材料、商品がいくら位なのか、
所謂「落とし所」を知っています。
これは過去の契約条件や複数社からの見積、コスト構造分析などで、
今回のこの案件がだいたいいくら位であればリーズナブルなのか、
事前に把握しているのです。ただ、この「落とし所」にも罠があります。
例えば今まで購入したことがないような「新技術の部品」であった場合、
界内の競争環境や事業環境、技術動向が大幅に動いており
過去の実績自体があまり意味を持たないような
「動きがある商品」だった場合には「落とし所」自体が
間違っている場合があるのです。バイヤーは忙しい人ばかりです。
多くのバイヤーは数回の交渉を行って自分が当初考えていた
「落とし所」近くの価格に決まりそうになった場合には
そこで契約条件を決めてしまっていました。
一方で「オークション」や「電子入札」は
正にその時点での市場価格を入手することができます。
サプライヤにとっては交渉相手はバイヤーではなく競合他社だからです。
つまりオークション実施後によくあるバイヤーの感想の
「思った以上に下がってびっくりした」ということにつながりがちなのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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