モノクロームのスローモーション映像の中、宮﨑あおいがカメラを構えて微笑む。オリンパスのデジタル一眼カメラ「オリンパス ペン EP-1」のCM。現在テレビに大量投下中だ。デジタルカメラとして復活した往年の名機「ペン」の戦略はどんなものだろうか?
通常、女性と中高年を中心とした男性という、相反する2つの層を狙ったターゲティングはあまり例がない。双方のKBF(Key Buying Factor=購入要因)が異なるからだ。
例えば、カメラで考えれば、男性なら「本格的な性能」「信頼のブランド」「写りの良さ」「ステータス」などであろう。女性なら「使いやすさ」「軽くて小さい」「みんなが使っている」「可愛くてオシャレ」などとなるだろう。その結果、両者向けのプロダクトは別々に設計されることとなる。
「ペンEP-1」はその両者を一気に狙う全方位戦略をとっているのが特徴だ。そしてそれを可能にしているのが、そのスペックと来歴。そして、キャラクターの宮﨑あおいなのである。
小さいけれど本格派。それは高度成長期のスター「オリンパス ペン」が確立したポジショニングそのものだ。それをデジタル化したのが「EP-1」となれば、男性ターゲットの納得感は高い。
一方、最新の技術で誰にでも使いやすくなっており、特徴である軽量・コンパクトさは、女性にも受け入れられる。オシャレなボディーカラーも設定した。
イメージキャラクターを務めるのは、男女問わない人気を誇る、写真をよくわかっている女優。そんな彼女は各々のターゲットに対して満足は間違いないというエンドーサー(endorser=保証人)として機能する。
選択と集中という言葉がある。また、モノをきちんと売りたければ、ターゲットをしっかりと絞り込むのは鉄則だ。「二兎を追う者は一兎をも得ず」という故事来歴は誰もが知っている。しかし、それらは絶対の法則ではない。ターゲットのKBFにマッチした要素が確立できれば、全方位戦略や二面作戦を敢行すべきであるだろう。
現在、大量に投下されている宮﨑あおいのCMが、いかに効果を発揮して、その戦略があたるのか。「オリンパス ペン EP-1」の売れ行きを見守ってみたい。
但し、筆者は他社の一眼デジタルカメラを購入してしまったばかりなので、EP-1をついつい、衝動買いしないように自制しながらではあるが。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。