M&Aの現場では、ポートフォリオ経営を望む経営者が増えている 

2009.08.01

経営・マネジメント

M&Aの現場では、ポートフォリオ経営を望む経営者が増えている 

清水 美帆
株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

経済環境が変化を遂げ、中小企業経営者のM&Aに対する意欲が高まる中、経営者の買収ニーズにも変化が見られます。増えている問い合わせは、異業種や異業態をいくつもポートフォリオ的に経営し、規模での売上げを伸ばし、経営のリスクを最小限に抑えたいと考える経営者からの声。M&Aのコンサルタントが中小企業同士でのM&Aの現場で起こっている状況を、実例と共に解説します。

先日ご成約のあった案件ですが、売り手も買い手も中小企業同士の案件でした。
(※守秘義務の関係で、業種、譲渡金額等につきましては控えさせて頂きます。)

売り手企業のオーナーは、メディア等にも出ている著名な方で、いくつかの事業ラインを持っていました。今回売却を決意された事業については、安定したキャッシュフローを出す事業だったのですが、既存事業とシナジーのある新事業を立ち上げる為、集中と選択を理由に、事業譲渡スキームでの売却を決意されました。

(※事業譲渡とは、法人を残したまま、一部の事業部門のみを切り放す手法で、負債の継承が買い手に発生しない為、昨今人気の高まっている手法。(事業譲渡に関する詳しい説明はこちらをご覧ください。

売却対象事業は、黒字事業かつ安定した収益を見込める事業でしたが、他の事業を行いながら、これ以上伸ばしていくのは難しい事、また現状維持を続けるのは、従業員のモチベーションも下がる事が予測できる為、事業を成長させてくれる方、従業員の方々に安心した職場を提供できる経営者の方に譲渡したいというご希望でした。

ご紹介をさしあげたのは、以前より弊社にご登録のあった中小企業のオーナー様で、いくつかの中小規模な事業ラインをポートフォリオ的に経営(保有)し、グループでの売上規模を増やしたいということ、と、経営戦略としてのリスクヘッジが目的でした。

分散投資の考え方にポートフォリオ投資という考え方がありますが、これは、投資先を一か所に集中させずに、できるだけ分散をして投資をすることを意味します。

この買い手企業の社長の考え方は、まさにポートフォリオ投資的な経営戦略なんです。

例えば、飲食事業ですと、焼肉店を20店舗ほど経営している企業がいるとします。この会社の事業ラインは焼肉店20店舗のみです。そんな中、狂牛病の様な事態が起こったとすると、この企業は、大きな打撃を受けるばかりか、事態が改善されるまで、大変な経営の危機に立たされることになります。

しかし、もしこの20店舗の内訳が、焼き鳥、うどん、居酒屋などの様々な業態が入っていたのであれば、焼肉がダメでも、他の業態が収益を保ってくれます。よって、最悪の状態になる事は事前に防げるため、リスクヘッジとなる。

また、ブランドのターゲットにも同じことが言えて、高級業態ブランドのみの経営の場合、今回の様なリーマンショックが起こり、景気が低迷した場合、高級ブランド業態が厳しい状況になる為、企業として、大きな打撃を受ける。

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清水 美帆

清水 美帆

株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

JMAA認定M&Aアドバイザー(CMA)

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