ホンダはトヨタと戦わない。 ~エコグランプリ~

2009.06.16

経営・マネジメント

ホンダはトヨタと戦わない。 ~エコグランプリ~

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

苛烈を極めるトヨタからの攻撃に対してホンダはどう出るのか。固唾をのんで見守っていたら・・・。

<クルマに乗ることが、ただの運転ではなく、イベントになる世界へ>。この言葉は非常に意味深い。
クルマの中核たる価値は「移動する・輸送する」である。そして、その「移動・輸送」がどのように実現されるのかという、製品の実体価値はクルマの内外装のデザインや走行性能、居住性や安全性、そして燃費性能などで構成される。
クルマをクルマたらしめているのは、何か一つの構成要素ではない。全ての要素が相まってクルマができあがっているのだ。

クルマという製品がもたらしてくれる根源的な価値を何と捉えるのかも重要だ。
かつての高度成長期に、はじめて「マイカー」を手にした人は「ああ、これで移動・輸送が楽になるなぁ」とだけ考えただろうか。真の喜びは「クルマのおかげで日常が非日常になる」というわくわく感ではなかっただろうか。

燃費性能は重要だ。そして、そのために走行性能を犠牲にしないスペックも重要だろう。
しかし、かつて非力なスペックな「マイカー」を手にした時、それを憂うのではなく、そんなクルマをいかに「乗りこなすか」に喜びを見いだし、実践しはしなかっただろうか。
パワーがなくてもいかに速く走るか。ハンドリング、ブレーキング、アクセルワーク。
<20世紀のレースはスピードを競っていた。21世紀のレースが競うもの。それは、あなたの燃費。>
エコドライブの能力を磨いて楽しむ。それがホンダの提案なのだ。

トヨタから突きつけられた逆挑戦状。ハイブリッドとしての性能は「モーターだけでは動けない」「モーターの性能が弱い」との指摘。
ホンダの答えは「気にしない」ではないだろうか。
クルマのスペックだけではなく、乗り手の乗り方、ドライビングの技術と一体となって実現できる低燃費と環境負荷の軽減。そんなメッセージに共感する自社ユーザーを囲い込んで、独自の世界で楽しく競い合って技術を磨く。
関心を持った見込み客もバーチャル体験をさせて、独自の世界観と価値観に引き込む。

スペック云々の指摘には耳を貸さず、あくまで独自の世界観を展開するホンダ。リーダーからチャレンジされたチャレンジャーは、単純なチャレンジを返すことはしなかった。
価値観の違いという、究極の差別化策を展開し、「同じ土俵で戦わない」という絶妙の戦い方を展開しはじめたのだ。

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「トヨタはなぜ、キレたのか?」
http://www.insightnow.jp/article/3557

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有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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