「空電(からでん)」は果たして普及するか?

2009.06.11

IT・WEB

「空電(からでん)」は果たして普及するか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

<携帯電話で「電話をかける」だけで、URLなどの情報がメールで届く>というNTTメディアクロスの新サービスは果たして普及するのだろうか。

■複雑性…理解できないほどの複雑性を持っていないこと。逆に当たり前に見えすぎない程度に複雑であること。そのバランス。

ユーザーにとって複雑ではない。しかし、「電話をかける」という当たり前な行為ではあるが、初回利用時に「電話をかけるとメールが届く」というしくみ自体に違和感を覚える。初回利用をいかにさせるかが一つのカギであるだろう。
企業にとっては、自社で特別なシステムを持つ必要もないため、問題にはならないはずだ。

■試行可能性…とりあえず、本格的な導入の前にプロトタイプやデモなどで効果を認識できること。自ら触ってみることができること。

サービス自体の普及のためには、リリースにあるようなデモ番号を告知して、多くのユーザーに体験させることがポイントとなるだろう。その意味では、サービス提供業者であるNTTメディアクロスが利用者へのプレゼントキャンペーンなどを展開し、応募登録ページのURLを空電で取得するような体験促進を積極的に展開すべきだといえるだろう。
もう一方の側面を考えれば、利用企業がいかに負担なく試行ができるかも大きなカギだ。リリースには利用料金の記載がなかったが、初期費用はできるだけ低減すべきだろう。従量課金である場合、その部分も普及の初期段階ではある程度軽減すべきだ。何といっても、新たなメディアはどの程度レスポンスが発生するのか読めない。まして、同サービスはユーザーの通話料は企業負担となっている。企業に対しても何らかの「お試し」を提供する必要があるだろう。

■観察可能性…目に見えない効果ではなく、明らかに効率が上がるもしくは質が向上するなどの効果が観察・実感できること。

ユーザー側としては、相対優位性の項目でも述べたとおり、二次元バーコードの読み取りやURL、検索キーワードなどの入力という手間の軽減が実感できるため問題ない。
サービスを利用する企業側がどの程度のメリットを実感できるかも重要だ。前項の試行可能性でも述べたように、レスポンスが読めないことを軽減するため、NTTメディアクロス自身がユーザーへのお試しキャンペーンなどを展開し、どのようなパターンでどの程度レスポンスが得られたかなどの結果を積極的に開示することが求められる。

以上のように整理すると、意外と一度試させることができさえすれば、ユーザー側の利用は進むと思われる。むしろ、問題は利用企業側だ。NTTメディアクロスの努力に期待したい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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