アメリカで白熱化する、プレミアム・コーヒー戦争とスタバいじめ

画像: toshifukuoka

2015.07.17

経営・マネジメント

アメリカで白熱化する、プレミアム・コーヒー戦争とスタバいじめ

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

アメリカで熱く繰り広げられるプレミアム・コーヒー戦争。マクドナルドやダンキン・ドーナツなど、シェア剥奪を狙う競合のスタバ攻撃は過酷だ。

減収、閉店が続いている米スターバックスに対し、不況知らずの勢いで売上を伸ばしているマクドナルドは、これでもかと全力でボディブローを食らわせる。スターバックスの年間マーケティング予算は、前述マクドナルドのわずか4分の1しかない2,600万ドル(26億円)。これを見ただけでも、図体のでかいガキ大将が、体の弱いもやしっ子をいじめにかかっているような印象を受けるのである。

アメリカで白熱化する、けっこう過激で、ちょっとえげつない、スタバいじめ。しかし、その一方で、スターバックスの零落は、厳しい言葉でいえば、自業自得である。「ライフスタイル・ブランド」としてのポジショニングを見事に確立し、「プレミアム・コーヒー」というカテゴリーを開拓したスターバックス。しかし、「利益追求主義」の果てに、エスプレッソ1杯に4ドルを払わせる本来の価値を失ってしまった。今夏、スターバックスは競合の追撃に対抗し、とうとう価格競争に参戦する。アイス・コーヒー、アイス・ラテなどを対象に、30%程度の大幅割引に踏み切るという。

スターバックス批判は、コーヒードリンカーでもない私がするまでもない。会長のハワード・シュルツが、2007年2月に綴った公開メモに、その過ちが雄弁に語られている。

「スターバックスは、効率と利益の名のもとに、コーヒー・ショップのロマンと体験を犠牲にした。(中略)そのルーツであった魂を捨て、温かみ溢れる近所のお店ではなく、ただのチェーンに成り下がってしまった(石塚訳)・・・」

顧客の期待を裏切り、夢を打ち壊したブランドが、その信頼を取り戻すことは容易でない。スターバックスの失敗には、誰もが学ぶべき痛い教訓が隠れている。

(初回2009年5月8日掲載)

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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