「時代じゃない?」では済まない場合もある!

2009.03.13

経営・マネジメント

「時代じゃない?」では済まない場合もある!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

今日も経済・企業関連のニュースは価格戦略に関する話題が花盛り。熾烈な値下げ合戦で血路を開かんとする企業の姿が数々伝えられている。昨日の記事の続編的にそれらを追っていこう。

例えば、こんな展開はうまい典型だといえるだろう。
<5個100円!「紅虎餃子房」に“100円餃子”登場>
http://news.livedoor.com/article/detail/4059515/

<通常380円(6個)のクオリティーそのまま!>に100円で提供するという。しかし、<「正直、ギリギリの値段設定なので、とりあえず期間限定で始めます。ここまで思い切った企画は、弊社でも前例がないんですよ」>と担当者はコメントするが、この餃子だけ食べて店を出る客はほとんどいないだろう。戦略的に赤字ギリギリ、もしくは赤字の商品を設定して集客を図る「ロスリーダー・プライシング」の典型だ。
消費者もそのあたりは心得ていて、他の商品もオーダーする。結果として一定の利益率が確保されるマージンミックスが実現される。企業も集客でき、消費者も得した気分になり、実際に特もしているという、良い関係だといえるだろう。

しかし、問題なのは、商品の流通過程におけるサプライチェーンのどこかに歪みが出ることだ。
ネットには取り上げられなかったニュースがある。3月12日の日本経済新聞朝刊24面。
<安い魚、売り場の主役に><解凍魚や”脇役”魚の需要が高まる>とのタイトルだ。
記事によると、冬場にもかかわらず、冷凍サンマや、通常ではマアジに比べ味の評価が低いアオアジが倍以上売れているようだ。他にも、脂の乗りが悪いゴマサバが、マサバを圧倒しているとある。
記事では<低価格路線で一時的に(魚の)消費は伸びるかもしれないが、旬の無視や画一化は魚離れを進める恐れがある>と指摘している。
旬でないものを食べる。味が劣るものを価格だけで比較して選択する。その影響は、最終的に消費者としては食文化の低下を招く。また、魚離れの方向に進めば、市場全体が地盤沈下する。
さらに気になる記述もある。<漁獲量が増えない中で、原材料価格を抑えるのは難しい。「今は生産者や流通のどこかの段階で損失をかぶっている。このままでは廃業が進む」>と東京海洋大学の教授のコメントを取り上げている。

生活者は、安い商品を手に入れることによって、家計が助かる。生活防衛ができる。企業は顧客を確保し、売上げを上げることができる。ミクロの視点でいえば、時代の要請にあった展開だといえるだろう。しかし、マクロの視点で見れば、生産者や中間流通に負担がかかり、流通構造自体の存続が危うくなる。また、消費者にとっても、食文化自体が危機に瀕することになる。これはいわゆる「合成の誤謬」である。

昨日「時代じゃない?」のCMキーワードで、時代と消費者からの要請に従って生き残りを図ることの重要性を記した。その激しさは、今後一層増してこう。
しかし、我々は消費者の立場に立てば、どこまでその要請を強めるべきなのか。その商品を選択するということは、どのような意味があるのかを、今一度考えることも必要なのだろう。
また、一方で企業の立場に立てば、自社の利益のみならず、サプライチェーンのどこかに歪みが生じていないか、きちんとチェックしながら活動することが求められるだろう。ミクロ視点だけでなく、マクロの視点が欠かせないのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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