ヤマダ電機はダイエーなのかパナソニックなのか?

2008.12.21

経営・マネジメント

ヤマダ電機はダイエーなのかパナソニックなのか?

猪熊 篤史

都市型店舗展開を加速するヤマダ電機の戦略について考えたい。

ダイエーは創業者である中内?氏が掲げた「価格破壊」をスローガンとして「よい品をどんどん安く」という方針で知られていた。バブル崩壊とグループ拠点である神戸における大震災の打撃を受けて、負債と自社所有の不動産を活用した大店舗経営が行き詰まった。球団の運営や大学の開設などスポーツ、文化、教育などの振興にも力を入れていたが、時代の潮流との差が鮮明になっていった。創業者の退任後、非主力事業の売却や小売り事業の縮小が続いた。

1960年代半ば以降、中内氏率いるダイエーとテレビの値引き販売で対立したのはパナソニック(松下電器)である。ヤマダ電機も創業当初は同社の製品を扱うナショナルショップだった。店舗で売れ残った商品を安売りしたところ飛ぶように売れたことが現在のヤマダ電機の事業戦略の起源となっているという。

パナソニックの創業者は「経営の神様」とも呼ばれる松下幸之助氏である。松下氏も事業者の使命として製品を水道水のように大量に安く販売することの意義(水道哲学)を示していた。製品の生産者という立場もあってダイエーの中内氏とは基本的に姿勢が異なっていたのかも知れない。消費者と向き合う商人的気質を共に強く持っていた松下氏と中内氏の違いは何だったのか?

本質的に差別化しようのない小売業と自ら製品を作り出す製造業の違いは、販売する商品への愛情やモノづくりや販売に関わる社員や関係者への思いやりを異質なものにするのだろうか?

結果が過去の評価の形成に影響を与えることはあるようだが、中内氏に対して語られることが多いのは「ワンマン経営者」という評価である。これに対して松下氏について語られることが多いのは「人の話をよく聞く」というような謙虚さに対する評価ではないだろうか?

中内氏は流通科学大学を設立して流通業を中心とする人材の育成を始めた。松下氏はPHP研究所による経営の実践的研究や松下政経塾における政治家の養成などにも力を注いだ。ヤマダ電機でも箱根に研修施設を作り人材育成に取り組んでいる。次世代の人材育成はリーダーにとって必然のようである。世代を超えて評価される価値を育み、優れた人材を組織の内外に生み出すプラットフォームを築いているかがダイエーとパナソニックの決定的な違いのようである。

ヤマダ電機は、オリジナルPCの製造・販売なども手掛けている。「ユニクロ」に見られるような製造小売業的な活動、スーパーやコンビニに見られるプライベート・ブランド化の動きも見られる。地域や国内の限られた市場を対象とする伝統的な小売という業態から進化出来なければ世代を超えての企業成長や存続は望めないのだろう。アジアや世界市場との共存は欠かせないテーマになるだろう。

売上3兆円企業を目指すヤマダ電機の今後の事業展開に注目したい。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。