『日常の疑問を経済学で考える』

2008.10.13

ライフ・ソーシャル

『日常の疑問を経済学で考える』

川渕 健二

ロバート・H・フランク『日常の疑問を経済学で考える』(日本経済新聞出版社)を読む。

なるほど。「高い」ものの存在には、「低い」ものが不可欠、逆に言えば、「低い」ものがあるからこそ「高い」ものが存在しうる、ということですな。

この本の別の箇所で触れられていましたが、「クラス全員が、クラス平均以上の成績を!」というスローガンは成り立たない(論理的に実現不可能)、というのと似てますね。

「クラス平均」じゃなくて「学年平均」だと成り立つのでは?と思われるかもしれませんが、突き詰めていくと、「全世界のすべての人が、全世界平均以上の学力を!」になってしまい、結局成り立たないことがわかるでしょう。

《しかし、従業員を意に反して低い職位にとどめておくためには、それなりの補償が必要になる。/その補償はどこから得られるのだろう。どうやら高い職位にある従業員の所得に課された、目に見えない税によってまかなわれているようである。この税が高すぎなければ、高い職位にある従業員は、他社でより高い所得が得られる可能性があるとしても今の会社にとどまり、低い職位にある従業員は、低い職位に耐えるに値する給料を受けとることができる。よって給与体系は、累進課税と似たような傾向を示すようになる。》(p91)

まあ、賛否両論あるでしょうが、とりあえずこれがフランクさんの考える答えでした。

《Q.フルタイムの管理職を低い給料で雇う代わりに、高い給料を払ってパートタイムの経営コンサルタントを雇うのはなぜ?》(p102)

これ、まさに「パートタイム」でしか仕事がないからで、だからトータルコストで考えた場合、コンサルタントのほうが安上がり、と、これはわかると思います。もし、「フルタイム」でコンサルタントを雇っている企業があるとしたら、その企業はちょっと……みなまで言わないでおきます。

ただ、それ以外に、フランクさんは、こういう理由も挙げています。

《多くの抵抗にあいそうな経営戦略は外部のアドバイザーによって導入されるほうが受け入れられやすいことを企業は知っていて、高い費用を支払っても経営コンサルタントを雇うのかもしれない。たとえば、ある企業が売上の見通しが悪いため、従業員の何分の一かを解雇しなくてはならないが、それが残された従業員の士気低下につながることを恐れているとしよう。このような場合、解雇は経営陣の考えではなく、マッキンゼーの推奨事項だと従業員に伝えるほうが容易なのだろう。》(p103)

なるほど。単なる責任逃れのような気もしますが。

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