ロバート・H・フランク『日常の疑問を経済学で考える』(日本経済新聞出版社)を読む。
さて、問題です。
問1:近所の電器屋で2000円の目覚まし時計を買おうとしたら、友人から、隣町の電器屋では同じものが1000円で売っていると言われた。アフターサービスはまったく同じとして、あなたなら、どっちで買う?
具体的な「隣町」を想定しつつ、考えてみてください。
続けて、もう1つ問題です。
問2:近所の電器屋で、252,000円の大型液晶テレビを買おうとしている。一方、隣町の電器屋では同じものが251,000円で買える。配送等アフターサービスはまったく同じとして、あなたなら、どっちで買う?
これは、ロバート・H・フランク『日常の疑問を経済学で考える』(日本経済新聞出版社)の、p28~29に載っていた例を、少しアレンジしたものです。
さて、答えは。
《費用便益の原則から考えれば、ふたつの例の答えは同じになる。》(p29)
アレンジした例で言うと、どちらの問の場合も、隣町まで行くことによって得られる便益は1,000円。費用は、隣町まで行く手間をいくらに換算するかによるが、どちらの場合も同じ。費用も同じで便益も同じならば、答えは同じのはず、というわけ。
しかし、多くの人は、252,000円の品を1,000円安く買うよりも、2,000円の品を半額で買ったほうがおトクと考える傾向がある。
《それは間違いだ。この例では、割引率を問題にすべきではない。》(p29)
なるほど。
というわけで、なかなかおもしろい本でした。
日常のなかで「?」と感じることをQの形で提示し、それに対する解答の考察、という構成が、堅苦しくなくて読みやすい。4時間ほど楽しめて、楽しめるだけじゃなくて「ほう!」というところもあって、1800円。まあ、なかなかのコストパフォーマンスだと言えるでしょう。
いくつか引用。先にQを引用した場合は、答えを考えてみてください。
《Q.生産性の低い従業員には、貢献度より高い賃金が支払われ、生産性の高い従業員には、貢献度より低い賃金が支払われるのはなぜ?》(p90)
へーえ。アメリカって、貢献度と報酬がモロに連動、賃金格差が激しく大きい、というイメージがあったんだが。それは一部のCEOだけの話か。CEOがホントに貢献してるのかは、また別の話として、CEOが新入社員の何倍の報酬を得ているか、といった面での賃金格差の話。
答え、考えてみました?
この本には、こうあります。
《それは、従業員のほとんどが、グループ内の低い職位に甘んじるよりも高い職位につきたいと考えているからだ。だが、すべての人がこうした希望をかなえられるわけではなく、結局グループ内の半数は中位以下の職位に甘んじるしかない。一部の従業員が高職につけるのは、他の従業員が低い職位につくことをがまんするからにほかならない。》(p90~91)
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