『〈海賊版〉の思想』

2008.10.04

ライフ・ソーシャル

『〈海賊版〉の思想』

川渕 健二

山田奨治『〈海賊版〉の思想 18世紀英国の永久コピーライト闘争』(みすず書房)を読む。


ロンドンの大書店主よりも、同じ本を3~4割安く売る〈海賊版〉出版業者が、コピーライトは永久ではない、という判例をイギリスで勝ち取ったお話。

今さらながら、ネットって、印刷術以来の大変化なんだなあ、と思った次第です。

著者と版元と関係が、大きく変わる。かもしれない。時に見られる、出版社や新聞社のネットへのネガティブな態度も、わからなくもない。

「うむ、なるほど!」と思った箇所を、いくつか引用。

《本に書かれている知識の大半は、すでにどこかに書かれてあることや、いわれていることを再構成したものだといってよい。知識に所有権があるのだとすれば、いま誰かが所有している知識、かつて誰かが所有していた知識を使わなければ、ひとは何かを表現することができない。本に限らず文化というものは、何もないゼロの状態から作られるのではない。すでにある何かに、いくばくかの事をつけ加えていくことが、文化の営みなのだから。》(p207)

もう一箇所。

《著作権が延びていちばん得をするのは、著作者ではなく著作権者であり、著作物を流通させて利益を得ている会社である。コンテンツ流通産業は、情に訴える主張を著作者たちにさせて、それを利用している。皮肉なことに、著作者たちはコンテンツ流通産業から搾取されながら、その産業の利益構造を守るために担ぎ出されているのだ。創作のインセンティブを高めるためには、保護期間を延ばすことよりも、印税率を上げることを著作者は要求すべきだ。保護期間延長を求める著作者たちのあいだから、そうした声がまったく聞こえてこないのは、彼らがコンテンツ流通産業の代弁者に過ぎないことの、何よりの証拠だろう。》(p222)

コンテンツ流通が、コンテンツ流通産業ではなく、著作者自身によってなされるようになると、上記の構図はガラッと変わる。

が、その前に、確かに日本文芸家協会、印税率上げ交渉……は難しいか、一律には。

著者以外の、本にかかわる人たちの中で、高給とりは、一握りの大出版社の社員だけだもんなあ。

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