今日はちょっとIT寄りのネタです。 大手百貨店の高島屋は、06年11月から、 「スマートシェルフ」 の実験を紳士用シャツ売り場で行っていたそうです。 (日経コンピュータ、2007/05/28)
「スマートシェルフ」とは、
ICタグ用のアンテナを各棚に取り付けた商品棚のことです。
商品に取り付けたICタグを定期的に読み取ることで、
リアルタイムで在庫量を把握することができます。
高島屋では、このスマートシェルフを
店頭とバックヤード(倉庫)に設置。
そして、実験の対象とした高島屋のプライベート・ブランドの
シャツにICタグを取り付けることで、
多様なサイズごとの在庫をバックヤードまで確認しにいかなくても、
店頭端末で即座に照会できるようにしました。
さて、先日発表された実験結果によれば、
販売成約率が4割弱から7割に向上したそうです。
ちょっと、「ホントかいな・・・」と感じるほどの
驚異的な成果ですね。
成約率が3割向上した理由については、
「在庫確認で顧客を待たせることなく、
多種の商品を販売員が薦めることができたから」
と分析されています。
ホンソメワケベラじゃありませんが、
やはり「客を待たせない」ことって大事ですね。
また、接客時間は、6.4分から9.2分へと伸びました。
在庫確認など、接客以外の時間が短縮された分、
顧客対応により長い時間をかけられるようになったという
ことのようです。
この話で、私が特に面白いと思った点は、
同社IT推進室の担当の方が、
当初、ICタグ+スマートシェルフの導入によって
接客時間は短縮できる
と想像していたことです。
技術系の方にありがちな発想なんですが、
IT投資の目的として、
「効率化」
にばかり目がいってしまいがちな人が多いです。
このご担当も、IT化によって、
接客業務を効率化できると思い込んでいたんでしょう。
でも、自分が顧客の立場で考えたらわかると思うのですが、
百貨店で効率的な接客は望んでいません。
自分のためにどれだけ親身に、
時間を使って対応してくれるかが重要ですよね。
だから、本来スマートシェルフの導入についても、
接客以外の無駄な業務を減らすことで
接客により多くの時間を割けるようにするという
「接客効果」
の向上を本来期待しておくべきだったんじゃないかな
と思います。
まあ、これまで長いこと、
業務効率化を第一義としてIT投資は実行されてきましたので
しょうがないことではあります。
しかし、これからは、サービス向上、サービス強化のために
いかにITを活用するかに焦点を当てることが企業生き残りの
鍵でしょう。
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2015.07.10
2015.07.24

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。
