痛みも和らげる介護で使えるコーチング

2008.07.27

ライフ・ソーシャル

痛みも和らげる介護で使えるコーチング

葛西 伸一
株式会社メンター・クラフト 代表取締役社長

コーチングが本領を発揮するとき コーチングを本当に発揮するシーンは、家族とのコミュニケーションなのかもしれない。

昔だったら、私も母に「いいから、我慢してくれ!そんなこといったって、看護師さんだって、
仕事なんだから文句ばっかり言うな!」と怒っていたと思う。

しかし、なぜかその瞬間、母のことを想う気持ちからか、自分がコーチであることを自然と意識し、
クライアントである母のために、コーチングモードへと自然と移り変わっていった。

そしてその瞬間、自分の口からでる言葉、さらには態度までにも大きな変化が起きた。

「よし、じゃぁ、一緒に頑張ってみようか!俺のほうにゆっくり体を傾けて!」

と言い、私は寝ている母の上半身をゆっくりと右に傾け、
抱き合うように、ゆっくりとこちらがわに少しだけ引き上げてあげた。
そしてその隙に、看護師さんたちがエアマットを手際よく挿入してくれる。

その間も、

「うんうん、痛いよな。でも少しだからがんばろう、、いいぞ!頑張ってる!もう少し!」

と抱きながら声をかけてあげた。

するとどうだろう、今までなら、痛い痛いと何度も悲鳴をあげていた母が、
一声も発さずに頑張っている。踏ん張っている。。

同様に、私はベッドの反対側に回り今度は左側に母と抱き合うように上半身を
左側にひねりあげてあげる。
母の痛みを共感し、母の頑張りを承認しながら。

このコーチングのおかげで、母は見事に全身の痛みを乗り越えて、
予想以上にスムーズにエアマットをシーツの下に敷くことができた。

そして、すぐさまエアマットに看護師さん達が空気を入れてくれる。
ゆっくりと空気が入り、母の体が少しづつ浮いてくる。気持ちが良さそうだ。

そんな安心した母の顔を見たのは、それが最後になった。
その3日後に、母は急性骨髄性白血病で他界した。

本当にコーチングに出逢えて良かったと思った。

本当の意味で母と痛みを共有できたわけではないが、
コーチングが、私に母と最期のラポールを構築してくれた。
そんな些細なコミュニケーションだったが、母との最期の思い出を創ってくれた。

母が最期に教えてくれたのがコーチングの本質だった。

ラポール、つまり本当の意味での信頼を構築することがコーチングの始まりであり、
それがコーチング成功のカギになるのだ。

無論、ビジネスでもそのスキルをいかんなく発揮することで、
大きな効果を期待することはできるし、実際に業績までも向上するケースがある。

しかし家族、とくに夫婦間や子供に対するコーチングは、時代的に見ても
今まさに必要とされているスキルなのではないかと思う。

改めてコーチングに感謝したい。
そして、私が今回コーチングのおかげで体験した感動を,
ビジネスの場でも、またプライベートでも一人でも多くの人にお伝えしていきたいと心から思う。

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葛西 伸一

株式会社メンター・クラフト 代表取締役社長

http://www.mentor-craft.co.jp/ http://www.mba-noryoku.com/ 大学卒業後、大手エレクトロニクス商社に勤務。その後、IT業界、映像コンテンツ業界と15年間の営業・企画・マネージャー等の経験を経て、 2007年4月に(株)メンター・クラフト設立。 豪州ボンド大学大学院 MBA(経営学修士) エグゼクティブ・コーチ(JIPCC認定) 日本コーチ協会正会員

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