生き残った「負け犬」 【1】

2008.07.18

経営・マネジメント

生き残った「負け犬」 【1】

猪熊 篤史

事業の成功と失敗を分ける境界について考えてみたい。

事業ポートフォリオを管理する枠組みとして、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)が良く知られている。これは事業を4つに分類して評価する経営分析のためのモデルである。PPMの詳細については、拙著「ベンチャーマネジメント」の第3章 戦略(3.事業ポートフォリオ)等を参照頂きたい。

PPMでは、「花形製品」、「問題児」、「金のなる木」、「負け犬」の4つの製品や事業、あるいは、戦略的な事業単位に分けて考えられる。

「負け犬」とは、市場の成長性が低く、相対的マーケットシェアが低い事業のことを指す。少し観点を変えれば、事業の魅力度が低く、自社の強みが未確立のビジネスということになる。この種類のビジネスは、売却や清算の検討対象になると言われる。

新規ビジネスやベンチャービジネスの多くは「問題児」に位置づけられる。成長性は高いが、相対的マーケットシェアは低いということになるだろう。主観的に考えても、魅力度は高いが、自社の強みが未確立のビジネスということになるだろう。

もっとも、最初は魅力的で、しかも、自社の強みが発揮できる「花形製品」として事業を始めることも多いだろう。しかし、このような思考は理想でしかないことがある。夢や理想に満ちた事業家にとって魅力的なビジネスは、客観的にはそれ程魅力的でないことが、残念ながらある。市場環境や事業自体が魅力的でない場合もあるし、その事業における優位性が発揮できない場合もある。それらの場合、製品・サービスは売れず、費用がかさみ、顧客からは評価されない。

別の事業ではそれなりの評価を得て、収益も安定するような場合、組織の「強み」を活かせるビジネスであると客観的に評価されることは少ない。

当初「花形製品」、あるいは、「問題児」と考えられていたビジネスは、時間が経つにつれて「負け犬」に格下されることがある。もっとも、情熱を注いだビジネスを「負け犬」だと認めることは困難なものである。 (次回に続く)

【V.スピリット No.76より】

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