常識の壁を打ち破る(3)

2007.05.28

仕事術

常識の壁を打ち破る(3)

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

経験のない異業界・異業種に新規参入する。 これは、確かにリスクが高い事業ではありますが、 業界の常識に埋没していないだけに「常識破り」のアイディアを 生むことがあります。

その典型例のひとつが、
無添加化粧品としてのブランドを確立した

「(株)ファンケル」

ですね。

1980年創業の若い企業ながら、
年間売上高は、ついに1千億円を突破してます。
(連結売上、07年3月期)

ご存知の方も多いと思いますが、
無添加化粧品開発のきっかけは、創業者で現名誉会長の
池森賢二氏の奥さんの「化粧品アレルギー」でした。

当時、たまたま池森氏の知人に皮膚科のお医者さんと
化粧品メーカーの経営者がいました。

お医者さんによれば、皮膚科に駆け込む女性の7割は、
化粧品が原因の接触性皮膚炎だと言われたそうです。

一方、化粧品メーカーの知人に聞くと、
化粧品の品質を維持するため、防腐剤、殺菌剤、
酸化防止剤等を「必要悪」として入れているとのことでした。

そこで、池森氏は、化粧品大好きの奥さんが
アレルギーに悩まされずにすむ無添加の化粧品の開発に
乗り出したというわけです。

池森氏にとって、化粧品業界はまったくの未経験ゾーン。
徒手空拳で取り組んだ事業ながら、逆に常識に囚われることが
なかったのが奏功しました。

さて、防腐剤などを添加しない化粧品を開発するに当たって、
池森氏が考えたのは、1週間で使いきれる小さな小瓶として、

「アンプル瓶」

を採用することでした。

このアイディアは、化粧品業界の人間に大笑いされました。

“化粧品は、女性に「夢」を売っているのだ。
 素っ気ないアンプルなんかに入れたものが売れるはずがない”

しかし、実際に販売してみると、肌トラブルに悩む女性の
高い支持を受け、倍々ゲームで業績が伸びていったのです。

「売れない」と断言した業界人もまた、間違った思い込みに
縛られていたんですね。

人間の欲求の一側面しか見えていなかったということでしょう。

人の欲求は、大きくは2つに大別できます。

・ポジティブなニーズの充足
・リスクの回避

ポジティブなニーズの充足とは、「こうありたい」が叶うこと、
リスクの回避とは、「こうなってほしくない」を避けられること
(もしくは低減できること)です。

化粧品にとっては、「美しくありたい」という女性の欲求を
充足すると同時に、「肌荒れ等を起こしたくない」という
リスクを回避したいという欲求に応える必要がありますよね。

しかし、ファンケル登場以前には、
リスク回避という欲求の存在に対する認識が、
化粧品業界の人には弱かったということでしょう。

余談ですが、ファンケルは米国では苦戦しています。

そこで、売れない理由を調査してみたところ、
米国人女性は、肌につけてピリピリするくらいでないと
効果を実感できないんだそうです。

肌に優しいファンケルがなかなか受け入れられないのは
無理もないですね。

ところ変われば・・・といいますが、
人の心理はまことに面白いものですねぇ。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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