問題の分析をやめてみる

2008.07.16

組織・人材

問題の分析をやめてみる

泉本 行志
株式会社アウトブレイン 代表取締役

問題が発生したら、まずその問題を分析し、根本原因を特定して、解決策を検討する。 これは我々コンサルタントが通常行うプロセスです。しかし、問題を分析すればするほど、余計に複雑で訳分からなくなることもあります。

 特に問題に「人」の感情や価値観が絡みあうときはそうです。 また、解決策の実行計画を立てても、実際に「人」がそのように動かず、問題の解決には至らないというケースもよくあります。 

 たとえば、チーム内の問題を解決しようとメンバーを集めて、「なぜその問題が起こるのか?」その原因追究を試みたところ、結局みなで問題をこねくり回し、余計にややこしくなり問題の全容がみえなくなってしまう。さらに「誰が悪い、何が悪い」といった批判が始まり、チームの雰囲気が最悪な状態になってしまうケース。 問題を解決するという目的を忘れて、問題それ自体に意識が奪われたため、「何をやっても無駄なんじゃないか」といったネガティブな気持ちが蔓延し、問題を必要以上に深刻化させてしまう。

 セラピーの世界では、あえて患者の問題を分析(診断)せず、既にそれが解決した状態に焦点を当てることで、問題が解消してしまう手法があります。 これは「ソリューション・フォーカスト・アプローチ」と呼ばれるもので、分析的なアプローチ(問題志向)ではなく、どうすれば望む状態になるか(解決志向)に焦点を合わせます。

 問題を追及するのではなく、解決像を先にイメージして、肯定的な要素を探すことに意識を向けることで、短期間に望む変化を得ることができるというものです。

 このセラピーの現場から生まれた手法は、「人」の感情が絡み合うビジネスの現場でも応用できるアプローチです。 問題を分析しないで解決策を考えるというのは、我々ロジックを駆使するコンサルタントにとっては、一見馴染みがない考え方です。しかし、実際にビジネスの現場で、組織をマネージしたことがある人ならば、結構イメージがつくのではないでしょうか。

 そもそも「問題の原因と解決策の間は、必ずしもいつもリンクしている」わけではない。問題の原因を見つけなくても、状況を変える解決策は別のところに存在することもあります。もちろん、機械やコンピューターなどの不具合は、その原因を特定しないと解決に至ることはありません。 しかし「人」を扱う際は、必ずしも原因を追究することが解決に繋がらない場合があります。

 たとえば、営業で売り上げがあがらない人に「なぜ売れないんだ?」と追求しても萎縮するだけだし、コールセンターで、電話対応数が少ないのは何故だ?とチームに追及すると、「○○さんの対応が遅いのが足を引っ張ってる」などと個人攻撃が始まってしまう。 これでは問題を追及することで「人」の感情がネガティブの方向に振れていくだけで解決を生みません。 批判された本人も、悪い点ばかりクローズアップされ、どうすればいいか考えてみろと言われても、どうすればよいかがまったくわからず、心理的に追いつめられるだけの可能性があります。このような場合、原因がどうこうではなく、「どうしたらよい状況になるか」に焦点を当てる方が、結果としてよっぽど解決への近道になるのではないでしょうか。

 また、このソリューション・フォーカスト・アプローチでは、“解決は既に起こっている”と考えます。 これは、問題は必ずしもいつも起こっているわけでない。 どんなときに問題が起こっていないか、その問題が起っていない「例外」的な状態を探すことで、その例外的に「うまくいっている」状況を増やそうとするアプローチです。 「問題が起こっている」状態ではなく、「起こっていない」状態に焦点を当て、そこから解決策のヒントを得る。この手法により、問題の原因追究に時間をかけることなく、より肯定的なモードで短期間で解決策を見出しアクションに導くことができる場合があります。   

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