平城京遷都1300年祭のキャラクターの戦いは、公式「せんと」、刺客「まんと」、第三の男「なーむ」と激しさを増しているが、やはり公式キャラの「せんとくん」の強さが際だっている。そんな中、「まんとくん」に巻き返しのチャンスがめぐってきた。
「まんとくん」にテーマソングが誕生した。
<他のキャラうらやむ?まんとくん応援歌 振り付けも募集>
アサヒコム http://www.asahi.com/culture/update/0701/OSK200807010005.html
各種受賞歴を持つ童話作家が歌詞を作り<インターネットの交流サイト「ミクシィ」に掲載したところ、要望や意見が相次ぐ反響>があり、<「NHKみんなの歌」で歌ったこともある>というシンガー・ソングライターが作曲し、歌ったもの。
<「まんとくんのうた♪」>
You Tube http://jp.youtube.com/watch?v=epFZ976353Y
これまで「まんとくん」は、良きにつけ悪しきにつけインパクトの強い「せんとくん」の前にはイメージが薄く、そもそも、「せんとくん」ありきの後追いのポジショニングという弱さが劣勢を招いていた。さらに第三のキャラクターとして「なーむくん」も登場したが、勝てていない。
「まんとくん」はそもそもの出自が、平城遷都1300年記念事業協会によるデザイン案選定過程の不透明性に対する抗議として、市民団体が作り上げたキャラクターだ。いわば「生活者の手作りキャラ」だ。当然ながら、CGM(Consumer Generated Media:生活者がインターネットなどを通して形成していくメディア)との親和性は高い。
ただ、遷都1300年祭キャラクターに関しては、CGMの力が、「せんとくん」のあまりのインパクトの高さに反響を生み、批判も次第に「キモかわいい」という変わっていったという経緯がある。一地方のイベントのキャラクターである「せんとくん」が無敵ともいえる認知度を手に入れた経緯である。
しかし、ようやく「まんとくん」にもフォローの風が吹き始めた。前述の、市井の作家やシンガーソングライターがミクシイなどで知り合い、歌を作る。それをYou Tubeにアップして多くの人が聴く。CGMならではの動きが「まんとくん」にも広がってきたといえるだろう。
アサヒコムの伝える「振り付け」がどの程度盛り上がるか分からないが、You Tubeできいた「まんとくんのうた」は、子供が繰り返し歌うような印象に残る曲になっている。恐らく、「キモかわいい」と「せんとくん」を愛する人々とは別のセグメントで、ファン層を広げる起爆剤にすることができるだろう。
今後、さらに「まんとくん」が戦いを優位に広げるためには、歌や振り付けだけでなく、さらに積極的に二次創作、三次創作を呼びかけることだ。もともと「ゆるキャラ」とは、絵柄としてのゆるさだけではなく、低予算で広く認知や活用が進むように、著作権などの権利関係を「ゆるく」している点にも特徴がある。CGMを通じてどんどんと、様々な人の創作活動を促進すべきである。
ある程度、「まんとくん」が盛り上がれば、「せんとくん」が「キモかわいい」ポジションを獲得したように、「やっぱり本当にかわいいのは、まんとくん」というパーセプションも獲得できるかもしれない。イメージとは、ある程度、その総和で左右されるものなのだから。
「まんとくん」の今後の活躍に期待したい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。