自分を少し幸せにする交渉の戦略

2008.06.27

ライフ・ソーシャル

自分を少し幸せにする交渉の戦略

猪熊 篤史

交渉のあり方について考えてみたい。

交渉術というビジネススキルがある。しかし、率直に言って「交渉」あるいは「術」という言葉の響きには、なかなか慣れない。あまり好ましい表現ではないと思う。

その理由は、2つである。1つは、日本に生まれ育った私にとっては「あいまいさ」と共存するする環境に体が慣れている。理論的に、交渉の技術を理解しても、それに従うことをためらってしまう。優柔不断なだけかも知れないが、モノゴトを首尾よく進めようと意識し過ぎると、自分も相手も身構えてしまって上手くいくものが上手くいき難くなってしまうことがあるようである。

もう1つは、「交渉」というと、まずは自分にとって良い条件を提示して、相手の顔色を見ながら条件を調整して、落しどころを探るという長いプロセスが頭に浮かぶため、「困難」、「複雑」、「めんどう」という印象がある。

あまり重要でないことと、非常に重要なことは、出来れば時間をかけずに決めたいものである。

交渉のプロセスなどについては、ロジャー・フィッシャーの「ハーバード流交渉術(Getting to Yes)」など著名な書籍に書かれているので、それらに譲ることにして、私が考える交渉の戦略やポイントについて書きたい。

交渉の基本は、「Win-Win」である。つまり、「自分もハッピー、相手もハッピー」という状態を実現することである。そんな基本からスタートすると「自分に都合の良い条件の提示から交渉を始めて、相手の顔色を見ながら条件を調整する」という交渉テクニックには意味がないようにも思える。

交渉の基本が「Win-Win」だというのは、自分が大きく得をして、相手が損をする場合、その場は良いかも知れないが、後でその反動を受けることになるためである。短期的に得をしても、結局、利幅が大きく削られたり、自分または双方が損をすることは多いであろう。

自分が損をしないためにも、相手の損益に配慮する必要がある。そうは言っても相手の状況、境遇、懐具合、将来の計画などは、通常、分からないものである。相手ですら分からないことも多いだろう。

交渉を上手く成立させるためには、自分が少し得をする必要がある。しかし、その「得」の源泉は相手の「損」によってもたらされるものではなく、条件の組合せや、交渉プロセスによって得られる情報、知識、経験などによって生み出される「シナジー(相乗効果)」である。相手も少し「得」をしたと思える状況が理想的である。

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