「出張族 御用達の店」のマーケティング

2008.06.18

営業・マーケティング

「出張族 御用達の店」のマーケティング

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

地方都市で繁盛している「出張族」が集う店。それらの店が意識して行っているのか否かは分からないが、マーケティングの観点から分析してみると、実に理にかなった「成功パターン」が見えてくるのだ。

・Promotion(プロモーション戦略)
出張族を集客するポイントは、一つはリピート促進だ。一見の観光客相手に高価格なメニューで一度きりのチャンスにとれるだけ取る。ちょっとボッタクリ的な戦略とは明らかに異なる。
リピートさせる仕掛けは、ここまでで述べたProductやPriceの妙もあるが、来店客に対する応対も大きな要素だ。「出張族 御用達」として成功している店はここに大きな成功のポイントがあるように思われる。
一人、もしくは少人数で来た新規の客に対し、来店時は極力フレンドリーに。そして、客が食事を始めてからは、その客が好む接触密度を保っている。放っておいて欲しそうな客はそっとしておき、それ以外には適度に声をかける。店舗ビジネスの基本中の基本ではあるが、実際には徹底しにくいことが励行されているのだ。結果、客が快適な時間を過ごせる。複数日滞在するなら、また明日も来ようか。その地を再び訪れた時には必ずまた来ようとなる。
さらにリピートの要は客が客を連れてくることにある。出張族が同行者を伴ってリピートする。さらに出張族を取り込むことになる。それだけではない。意外と地元の担当者に認知されていなかったり、敬遠されていたりする場合でも、「一度行ってみるといいよ!」と出張族が逆に、地元の担当者に紹介することもある。
もちろん、このPromotion戦略の要である「リピート促進」や「顧客紹介」は顧客の満足度が高くなければうまくいかない。特にここまで述べてきた他の3つのPと、この項で述べた顧客応対が結実してのことであるのは言うまでもない。

肝心なのは、上記の4P以前に重要なマーケティングのポイントである、「Segmentation・Targeting・Positioning」の妙だ。
「ビジネスパーソン」の中の「地元<出張族」、「歓待を受ける出張族<お一人様出張族」とセグメンテーションの切り口とターゲティングが明確である。
また、「出張族お一人様(もしくは少人数)需要」に絞っているため、「気軽に利用できて地元ならではの味が楽しめる」という接待の用の店と明確に差別化しているポジショニングも重要だ。

ここまで見てきたように、ターゲットとそれに対するポジショニングを明確にし、そのポジショニングを実現すべく、4つのPを最適化するということは、全てのビジネスにおけるマーケティングの基本だ。その基本を徹底すると言うことを、「出張族 御用達の店」が意識してやっているのかと言えば、実際にはそうでない場合が多いだろう。様々な紆余曲折の末に辿り着いた結論なのかもしれない。
だからこそ、基本の励行ができているともいえるだろう。「戦略の明確化」と「施策の整合性」。事例からその大切さを改めて学んだように思う。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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