名ばかり店長問題とマクドナルドの巧妙な戦略

2008.05.26

経営・マネジメント

名ばかり店長問題とマクドナルドの巧妙な戦略

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

マクドナルドが、極めて重要な意思決定を行なった。8月以降、店長に残業代を支払うことを決めたのだ。その背後には、外食産業No.1企業としての巧妙な戦略があるのではないか。

しかし同社はNo.1企業である。経営体力で見れば、2位以下の企業
に比べて余力があることも確かだろう。すなわち2位以下の企業が、
店長への残業代支払いへと方向転換したときに受けるダメージと自社
が蒙る影響を天秤にかけたときに、他社に与える影響が自社に優位に
働くと判断したのではないだろうか。

人材確保の面から考えても、残業代をもらえる店長職と残業代をもら
えない店長職であれば、残業代をもらえる方に人気が集まるのは当た
り前である。すなわち人手不足が深刻な外食産業では、マクドナルド
が店長に残業代を支払うことを決めた以上、この流れに追随できない
企業は大きなダメージを受けることになる。

これこそがマクドナルドの隠された、しかも本当の狙いではないのだ
ろうか。

マクドナルドの方針転換後、すかいらーくは、店長をできるだけ独立
させ、フランチャイズチェーン店をもたせる仕組みを作ることを発表
した。基本的には社外から加盟店を募るのがFCのやり方であり、内
部へののれん分けでFC展開を行なうのは異例である。異例であると
いうことはすなわち、外食でのFC展開にはこれまで何らかの問題が
あるために、積極的に乗り出す企業はなかったということだろう。

すかいらーくが今回の意思決定を行なった背景にマクドナルドの方向
転換がどれぐらい影響しているのかは、わからない。しかし、これま
でやっていなかったFC制導入に転換するというからには、に何らか
の影響を与えていることは間違いないだろう。

今回のマクドナルドの戦略は、業界No.1企業が採るべきお手本のよ
うな戦略だと思う。これにより、業界全体がどう影響を受けるのか。
半年後から一年後ぐらいの動きを注意していれば、今回マクドナルド
が投げかけた波紋の広がり具合が見えてくるだろう。


文中でふれた内容については下記を参考にしました。
日本経済新聞2008年5月21日付朝刊1面・13面
日本経済新聞2008年5月22日付朝刊3面
日経MJ新聞2008年5月23日付1面

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