働きたい人、採用したい会社は多いが・・・。
日本では伝統的に、仕事を細かく分解し、担当業務の範囲やプロセスや求める結果を明確に定めるという発想がほとんどありません。営業部員、総務部員、課長、係長といった所属や立場、役割は決めます。しかし、欧米企業におけるジョブ・ディスクリプション(職務記述書)のように、その人が具体的に何をするのか、一つ一つの職務を厳密には定めません。「営業部員なのだから、営業に関係することは何でもやる」「課長なのだから、課のことは全部見る」「誰の仕事か分からなければ、気付いた人がやる」という暗黙の了解に基づいて、組織は動いてきました。
もちろんこれは、悪いことばかりではなく、仕事の境界線が曖昧だからこそ、誰かが困っていれば手伝い、担当外であっても皆が臨機応変に動きます。「それは私の仕事ではありません」とは言わず、みんなで協力して何とかしようとします。そんな、職務の曖昧さを前提としたチームワークが、日本企業の強さの一つでもありました。しかし、高齢者を活用しようとすると、この曖昧さは障害になります。仕事が細かく分解されていないために、「看護師の仕事」「介護士の仕事」「営業の仕事」「総務の仕事」「課長の仕事」などと資格や職種ごとに、曖昧なままひとまとめにされているからです。そのままでは分業やシェアができず、新しく人が入る余地はありません。
大事なことは、「資格者でなければできない仕事」「簡単な講習を受ければできる仕事」「資格がなくてもできる仕事」といった風に分解し、細かく切り出すこと。そして、資格がなくても、熟練しなくてもできる仕事を、他の人たちに開放することです。この試みは、資格を持っている人や熟練者にもメリットがあります。初心者でもできる仕事に、多くの手間や時間を取られてしまっているからです。そんな仕事を他の人が担ってくれれば、資格を持っている人は、より専門的な仕事に集中できるようになるはずです。
高齢者雇用というと「高齢者の意識を変え、スキルをどう高めるか」といった議論になりがちです。しかし、高齢者の方を変えることばかり考えるのではなく、制度や仕事の方を変えるという発想の転換が必要なのだと思います。
高齢社会
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。
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