高齢者雇用を阻む、2つの“意外な壁”

2026.10.19

ライフ・ソーシャル

高齢者雇用を阻む、2つの“意外な壁”

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

働きたい人、採用したい会社は多いが・・・。

医療、介護、保育、建設、物流など、さまざまな業界で人手不足が深刻になっています。一方で、日本には豊富な経験や能力、スキルを持つ健康な高齢者が大勢います。そしてその多くには、「元気なうちは働き続けたい」という意向があります。普通に考えれば、高齢者の雇用・活用によって、人手不足の解消が進んでいっても良さそうなものですが、そうはなっていません。なぜでしょうか。

●資格がなくてもできる仕事でも…
 これは私が直接、経営者や人事責任者の方々に聞いた話ですが、いい人なので採用したいと思うけれども、募集している仕事には「資格」が必要なので、残念ながら採用できないというケースがかなり多いそうです。それも、“本当に資格を持っていないとできない仕事”ではなく、実際には、資格がなくてもできるような仕事だけれども「法律や発注者の要望などで資格が必要と定められているから仕方がない」というのが実態のようでした。

ここから、高齢者雇用を阻む2つの壁(検討課題)が見えてきます。
 1つ目は、「資格制度の再点検」です。資格制度には安全や品質を守るという重要な目的があるとはいえ、社会や技術の変化によって、いろいろな資格の必要性やその内容も変わっていくはずです。簡単になった操作や作業、実際にはやらなくなったもの、不要になった知識、技術などが、いまなおその資格の取得に際して求められているということもありそうです。
 制度というものは一度できると、変えるのはなかなか大変ですし、「資格」には既得権やしがらみが背景にありそうなので、余計にそうでしょう。改めて、各種資格の意味や必要性や内容を見直してみることは無駄ではないと思います。

2つ目は、資格者がやっている仕事の分解と切り出しです。募集職種の業務のすべてが、その資格を保有していなければできない仕事なのかどうか、改めて細かく見てみるということです。
 例えば、看護師の仕事でいえば、患者や家族の案内や接遇、物品を運ぶ、備品の補充、食事の配膳、病床の整理整頓といったこともあるでしょう。これらは看護師の資格がなくてもできることです。介護では話し相手、散歩の付き添い、配膳、レクリエーションの手伝い、施設内整理といった仕事があり、保育なら読み聞かせ、遊び相手、清掃や庭の遊具の管理といったこと、建設や物流の現場でも資材の確認、写真撮影、記録、清掃、準備などがあって、これらは資格がなくてもできるでしょう。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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