高齢者の免許返納問題から見えてくる、高齢期に相応しい住環境とは?

2026.03.10

ライフ・ソーシャル

高齢者の免許返納問題から見えてくる、高齢期に相応しい住環境とは?

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

75歳以上の免許返納率は2019年の6.2%から、2024年は3.6%と 徐々に減ってきています。

「自動車の運転は認知機能の維持に効果的だから、続けるべきだ」というのも同じようなもので、確かに認知機能を維持するという目的に対して、運転はその手段の一つですが、当然、他にも手段はあります。

問題は、「運転をやめた結果、外出が減り、人と会わなくなり、頭や体を使う機会が激減して、認知機能が衰えてしまう人が少なくない」ということです。言い方を変えれば、「車を運転しなければ、高齢者が社会参加や交流をしにくくなっている状態である」「運転をやめたら、生活の選択肢が大きく制限されてしまうような社会である」ということです。

運転を継続するかどうかに関係なく、高齢者がいつまでも人と関わり続け、頭を使い、体を動かせる環境をつくる、車がなくても別の選択肢が自然に用意されている地域社会をつくる、というのが本質的で有力な手段であるはずです。
例えば、徒歩圏内に日用品や食料品を買える場所や、銀行や病院といった利便施設があり、気軽に立ち寄れる居場所もあって、行けば何かを学んだり作ったり、誰かと顔を合わせておしゃべりに興じたりすることができる。さらに、送迎や相乗りバスなどで移動や参加の選択肢がある。そんな地域社会の中で楽しく生きる日常が、認知機能の維持につながっていきます。

本来は、このような地域社会づくりが先で、免許返納はその結果あるいは副産物と位置付けるべきなのかもしれません。なぜなら、そのような地域社会で暮らしていれば、車の運転をやめることが「生活範囲を縮小する決断」ではなくなりますし、「社会参加や交流を諦めるきっかけ」にもならないからです。
そうすると、免許返納問題というのは、小手先の策なのであって、高齢者に我慢を強いているだけという見方さえできるようにも思います。返納率が約5%未満で推移しているという事実は、地域社会全体のあり方を十分に見直さないまま、免許返納だけを高齢者に求めてきたことの表れだと考えることもできそうです。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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