サービスサイエンティストとして、サービスの本質的な理論を提唱し続ける松井さんとパナソニックで実際にCX・CSに向き合い、お客様へのサービスを提供されている今村さんをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。 (聞き手:猪口真)
猪口 だからやっぱりパナソニックさんの家電が増えていきますよね。うちも、よく見たら冷蔵庫もそうだしエアコンもそうでした。
松井 僕は、その「良く見たら」というところに課題意識を感じています。家の中の家電がどのブランドか分からないのは、買っておしまいになっていることが多いからです。買って使い始めた時は「やっぱりパナソニックでよかった」と思っても、時間が経つと当たり前になってしまう。ここが空白期間の課題のひとつなのです。
パナソニックの家電がすでにお客様のくらしの中にあっても、あるだけになってしまっている。その上にサービスを乗せることができたら、家電がサービス媒体、プラットフォームになれると思うんです。外からドアをノックして家庭の中に入っていくのは大変ですが、パナソニックの場合はすでに家電がくらしの中にあるので、それをプラットフォームにして体験価値やサービス価値を乗せていくことができます。

猪口 そこからまったく違うサービスがつくれそうですね。
松井 できそうですよね。すでにくらしの中に入っているのに、これまでは「入っているだけ」になっていた。でもそこにはモノの提供だけでなく、サービスの価値という点で大きな可能性があると思っています。
猪口 まさにくらしをトータルでサポートできるようになりますね。
今村 それがデジタルにつながることの意義です。最初はそれぞれの家電が一個ずつAIアシスタントにつながっていたのが、横でつながることでもう一段上の価値へと進化していく。それができるのがこの技術の面白さです。技術の面白さと人の行動変容がマッチングしたとき、次の価値が生まれてくると思います。
猪口 お客さんの行動が変わって、その変化を楽しい、幸せだと感じてもらえなければ意味がないですよね。
今村 そうなんです。「松井家ストーリー」や「Bistroアシスタントのあるくらし」といった紹介パンフレットをつくったのは、行動変容にこそ大きな価値があり、それが伴わなければビジネスの成功にはならないと考えているからです。
松井 Bistroアシスタントはレシピの提案機能が重宝されていますが、実は一番感触が良いのは褒めてくれる機能だそうです。
今村 たとえ誰も褒めてくれなくても、Bistroアシスタントは、味はわからなくても、「お皿とのマッチングがいいですね」なんて褒めてくれます。以前、レシピ通りにパスタをつくって、仕上げにレシピにはない黒胡椒をかけてみたら、Bistroアシスタントがすごく褒めてくれました(笑)
インサイトナウ編集長対談
2024.06.03